2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K04706
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秋山 みどり 京都大学, 工学研究科, 助教 (50807055)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | cubane / conductance / fluorine |
Outline of Annual Research Achievements |
箱型分子であるキュバンが完全にフッ素化された全フッ素化キュバンは,箱の内部にC-F結合のσ*軌道が集合して低エネルギー準位のLUMOを形成し,電子受容性を示すと予測されていた。研究代表者は科研費(若手研究)課題において全フッ素化キュバンを初めて合成し,電子受容性の証明およびラジカルアニオン種の観測に成功した(Science, 2022)。この分子について,内部の軌道を介した電子伝導が可能であるかと考え,本研究では,全フッ素化キュバンの内部空間を利用した電子伝導の実現を目指すこととした。具体的には,全フッ素化キュバンの単分子伝導度を測定することで,電子伝導の可否を調べ,その伝導機構を明らかにすることを目指している。 当該年度は,走査型トンネル顕微鏡―ブレークジャンクション(STM-BJ)法を用いて全フッ素化キュバンの単分子電子伝導度の計測を試みた。STM-BJ法による計測のためには,金属基盤および金属短針と対象分子が結合を形成する必要がある。まずは,全フッ素化キュバンに結合部位を導入した1,4-ジシアノ-2,3,5,6,7,8-ヘキサフルオロキュバンを合成した。対象分子として,フッ素化されていない1,4-ジシアノキュバンも合わせて合成した。これらの分子についてSTM-BJ法により電子伝導度を測定したところ,フッ素化されている分子の伝導度はフッ素化されていない分子に比べて1桁高い伝導度を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,当初の予定通り,対象分子の合成およびSTM-BJ法による単分子伝導度の計測を行うことができた。さらに,全フッ素化キュバンの単分子電子伝導度について,期待通りフッ素化の効果を観測することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,全フッ素化キュバンの電子伝導メカニズムに関する研究を行う。具体的には,まず観測された伝導が狙い通り分子のLUMOを介していることを,熱起電力測定によって確かめる。また,温度可変測定により,伝導がホッピング伝導であるか,トンネル伝導であるかを確かめる。
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Causes of Carryover |
調達方法の工夫などにより,当初計画より経費の節約ができたため。また,当初計画よりも少量のサンプルで実験が可能であることがわかったため,物品費が大幅に節約できた。次年度はより多くのサンプルが必要になる測定を行う予定であり,次年度の物品費と合算して使用する。
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