2023 Fiscal Year Research-status Report
フッ素ガスによる液相フッ素化法を利用した新規フッ素化合物の合成研究
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23K04717
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相川 光介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30401532)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フッ素化反応 / フッ素ガス / ぺルフルオロアルキル化合物 / フッ素原子 / ラジカルフッ素化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ素原子が高い電気陰性度を持つことや炭素-フッ素結合が強固であることなどにより、高度にフッ素化された化合物は特異な性質を示すため、有用な化合物群として注目されている。例えばペルフルオロアルキル基を側鎖に持つポリマーは熱安定性や撥水撥油性を示すことが知られている。そうしたペルフルオロアルキル化合物のうち、鎖状のものは螺旋構造を取り剛直であるなど構造・物理的性質もよく知られている。しかし、炭素鎖8以上の長鎖ペルフルオロアルキル化合物は生体蓄積性や毒性があるといった問題点が指摘されている。このような背景のもと本研究では、鎖状ではない環状ペルフルオロアルキル化合物の簡便な合成法を確立し構造や物性調査を行うとともに、応用展開も検討することを目的としている 環状化合物の水素原子を効率的にフッ素原子に変換する方法として、フッ素ガスを用いた液相直接フッ素化法(PERFECT法:ラジカルフッ素化)を用いることとした。この手法により、生成した環状ペルフルオロアルキル化合物の官能基化も容易になると期待した。入手可能な環状アルコールとペルフルオロアルキル(RF)基を持つ化合物とを縮合させて含フッ素エステルとしたのち、これを溶解できるフッ素系溶媒中でフッ素ガスによる液相直接フッ素化反応を行うことで、フッ素原子が導入された目的の環状化合物を含む混合物を得た。フッ素化反応条件の検討の結果、ベンゼン添加で収率が改善することが分かった。続いてこの環状化合物を含む混合物をフッ化ナトリウム共存下、各種芳香族アルコールやアミンとエステル交換およびアミド化反応を試みた。検討の結果、ベンジルアルコールとのエステル交換反応により、対応する安定なエステルをシリカゲルカラムとGPCによって単離精製することに成功した。全フッ素化とエステル交換反応の2ステップ収率は最大でおよそ30%となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進行している。基質としてエステルで官能基化された環状アルキル化合物の合成に成功した。さらに液相フッ素化法による炭素ー水素結合のラジカルフッ素化反応では、ベンゼンを添加することによって、効率よくフッ素化された対応する生成物が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
官能基化された環状RF化合物の合成において、他のベンジルアルコールやベンジルアミン誘導体等についても検討を行い、様々なエステルおよびアミド誘導体(環状RF化合物)を合成する予定である。またそれらの得られた環状RF化合物と直鎖RF化合物やペルフルオロエーテル化合物の逆相HPLCの溶出時間を比較することで、疎水性の評価を行う。さらに、ベンジルアミンを用いると得られる環状RF化合物は固体となったため、単結晶X線構造解析を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の経費は概ね予定通りに使用された。次年度の使用額が158,234円となったが、これは次年度の実験に必要な物品費に充てる予定である。
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