2023 Fiscal Year Research-status Report
Multicomponent Catalyst-Free Asymmetric Synthesis of Optically Active Spiroxyindoles for Drug Discovery
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23K04729
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
中野 博人 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (70217800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
權 垠相 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10360538)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アミノアルコール / 不斉 Hetero Diels-Alder 反応 / 光学活性スピロオキシインドール化合物 / イサチン類 / エノン類 / 単一触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
創薬に汎用される光学活性スピロオキシインドール化合物 (I) の有効な合成法としてイサチン類とエノン類との不斉 Hetero Diels-Alder (HDA) があるが,(I) を高収率および高光学収率で得るためのには 2 成分や 3 成分の触媒系(触媒+共触媒)を用いる必要がある。本研究では,有機分子触媒だけを用いて共触媒を用いない簡便な本不斉 HDA 反応を開発する。 本研究の令和5年度の研究課題として,有機分子触媒としてアミノアルコール触媒だけを用いる本不斉 HDA 反応の検討を行った【申請者,研究分担者,研究協力者( 2 名)担当】。 最初に,第 1 級ヒドロキシ基を有する様々な第 1 級および第 2 級アミノアルコール触媒を合成し,それらを用いるイサチン類とエノン類とのそれぞれの不斉 HDA 反応を行い,最良のアミノアルコール触媒の探索とその反応の促進に寄与する条件を明らかにする目的で溶媒効果(「ハロゲン結合」能をもつ溶媒)と超音波を利用する反応条件での反応を試みた。その結果,反応溶媒として,トリフルオロベンゼンを用いて反応を行ったところ,多成分触媒系と同様な良好な立体選択性 (90:10 dr, 94% ee) と 40% の中程度の化学収率で目的とするスピロオキシインドール化合物であるキラルなスピロオキシインドール-テトラヒドロピラノン化合物の生成が確認された。化学収率 40% はさらなる改善が必須であることが明らかではあるが,この結果は共触媒を用いず,一つの触媒のみを用いる本反応システムを開発できることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究課題は「アミノアルコール触媒を用いる不斉 Hetero Diels-Alder (HDA) 反応に有効なアミノアルコール触媒と反応条件の検討」であり,様々な第 1 級ヒドロキシ基を有する第 1 級および第 2 級アミノアルコール触媒の合成を行い,それらを用いるイサチン類とエノン類とのそれぞれの不斉 HDA 反応を試みた。また,反応の促進に寄与する方法として溶媒効果 (「ハロゲン結合」能をもつ溶媒) と超音波を利用する反応条件での反応を検討したところ,ハロゲン系溶媒としてトリフルオロベンゼンが化学収率の向上に寄与する溶媒効果を示すことも明らかにすることができた。これらの結果は,トリフルオロベンゼンを溶媒として,共触媒を用いず,有効に分子設計されたアミノアルコール触媒のみを用いる本反応システムの開発が可能であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の研究結果から,本反応へのハロゲン系溶媒の効果で十分な立体選択性を保ちながら化学収率を向上させることができることが明らかになったが,さらに触媒自体に着目してイサチン類とエノン類の両方の反応基質を一つの触媒で活性化できる多点認識型触媒としてブレンステッド酸部位を有する様々なアミノアルコール触媒(I)を合成し,それらを用いるそれぞれの不斉 Hetero Diels-Alder (HDA) 反応を検討する。その中から,高収率 (> 90%) と高立体選択性 (> 95% ee) を達成できる触媒(I)を明らかにする。また,新規アミノアルコール触媒の X 線構造解析,さらにそれらを用いる HDA 反応の反応遷移状態モデルの DFT 計算などを駆使して,反応の推定機構を明らかにする。その結果に基づいてさらに高い機能性をもつ多点認識型アミノアルコール触媒を設計・合成することを試みる。反応条件からの検討や触媒の改良検討から得られた知見に基づいて,改良型触媒を用いる様々なイサチン類とエノン類との 不斉 HDA 反応を行い,それら触媒の基質適応性の範囲を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,以下 A とBにおける使用額が,令和5年度の予定使用額内で収まったため。 令和6年度の使用予定内訳: A. 消耗品 : (1) キラルカラム : カラム 3 本を購入予定:光学活性生成物の光学収率をキラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で決定する。(2) 試薬 (合成試薬および有機溶媒) の購入: 不斉触媒を合成するために必要なアミノ酸誘導体の購入,その触媒反応に用いる反応基質の合成に必要な試薬の購入,さらに,反応後処理に必要な 有機溶媒を購入する。(3) ガラス器具の購入:合成反応に必要な各種反応容器,合成した触媒や生成物の単離・生成に使用するカラムクロマトグラフィー管などを購入する。旅費: (1) 国内旅費予定:「研究成果を学会 (日本化学会,日本薬学会,複素環化学討論会,有機合成化学シンポジウムなど) で発表し情報収集する。 B. その他: (1) ガラス器具や合成および分析機器の修理:破損した合成やその処理に用いるガラス器具の修理,加熱や冷却に必要な合成装置の修理,さらに,合成した化合物の分析に使用する機器 (HPLC),核磁気共鳴スペクトル,旋光計,赤外線分光光度計など)および冷凍冷蔵薬品保管庫などの修理。(2) 複写費予定。理由:研究用資料(参考論文など)の複写。 (3) 印刷費予定: 学会発表用ポスターの印刷。
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