2023 Fiscal Year Research-status Report
一置換ビフェニルによる軸不斉化合物の創製とビスピンサー型触媒への利用
Project/Area Number |
23K04738
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
安井 英子 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (00398900)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 軸不斉 / 一置換ビフェニル / α-ジアゾエステル / ピンサー錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、2,2’-ジブロモビフェニルを2当量のn-ブチルリチウムでジリチオ化し、2当量のα-ジアゾエステルのジアゾ基末端窒素原子に付加して一置換ビフェニル化合物を得ている。この化合物は、ビフェニル回転軸のまわりにそれぞれ1つしか置換基がないにも関わらず、ある程度の軸不斉性を示すことが分かっている。本研究の目的の1つは、この一置換ビフェニル化合物が、なぜ軸不斉を発現するのかを明らかにすることである。 まずは軸不斉化合物の2,2’位から伸びた置換基末端にあるエステルをアミドへと変換した。アニリンとその誘導体を用いて、アニリド、ペンタフルオロアニリド、2,6-ジメチルアニリド、3,5-ジメチルアニリドを合成し、それぞれの化合物の軸不斉性をVT-NMRで評価した。その結果、ペンタフルオロアニリドはDMSO-d6中140度で、もともと非等価であったメチレンプロトンが等価になったことから、軸不斉性が向上していないと判断した。アニリドおよび、2,6-ジメチルアニリドでは同様の条件において非等価であるものの、ピークがやや融合しかけていた。3,5-ジメチルアニリドがもっとも高い軸不斉性を有していた。しかし、もっとも高い軸不斉性を有していた3,5-ジメチルアニリドでもキラルカラムで分割したそれぞれの異性体は容易に異性化してしまった。よって、置換基の末端の構造をアミドに変換しても、軸不斉性が大きく向上しないことが分かった。 つづいて、置換基中に不飽和結合があることが軸不斉性に影響を与えるかについて検討を行った。その結果、2,2’-ジプロピル-1,1’-ビフェニルでは3位メチレンは1H-NMRで等価であったが、2,2’-ビス(3-ヒドロキシ-1-プロペン-1-イル)-1,1’-ビフェニルの3位メチレンは非等価であった。よって、置換基上の不飽和結合は軸不斉性を高めるために働いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画時では、1年目に軸不斉性が高くなる理由について、ある程度明らかにしておきたいと考えていたが、現段階では推測の域を出ておらず、未だはっきりとしていない。そのため、やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2,2’-ビフェニルのオルト位置換基に不飽和結合を含む化合物を数種類合成し、どのような構造において軸不斉性が高くなるかを調べる。また、一置換ビフェニル化合物からビスピンサー錯体を合成して、不斉反応に利用することを目指す。
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Causes of Carryover |
科研費を他研究費と合算しての支払いをしていないため、端数の237円が残ってしまったため。2024年度に合わせて使用する。
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