2023 Fiscal Year Research-status Report
天然・人工高酸化度C19ジテルペンアルカロイド類の網羅的全合成法の開発
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23K04749
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 浩一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20804371)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 有機化学 / 天然物合成化学 / アルカロイド / ラジカル反応 / 生物活性天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
C19ジテルペンアルカロイドは、キンポウゲ科やバラ科の植物より単離される天然物群である。高度に縮環した6/7/5/6/6/5員環からなる特異な含窒素6環性骨格上に多数の酸素官能基や連続不斉中心を有する、極めて複雑な構造である。本研究課題では、①高酸化度フラグメント同士を連結する収束的合成戦略を採用し、②ラジカル反応による高化学選択的な炭素炭素結合形成反応を巧みに利用することで、アコニチンなどの高酸化度C19ジテルペンアルカロイドの統一的全合成を実現する。 本年度は、カップリング反応に用いるフラグメントの1つであるAE環部の不斉合成法を新たに確立した。メチルエステルを有するシクロヘキサノンに対し、不斉Mannich反応により、第4級炭素を構築しつつ、保護アミン部位を導入した。その後、C1位酸素官能基の前駆体となるシリル基の導入を経て、AE環を構築した。最後に、シリル基のアルコールへの変換、アミンの保護基の除去とエチル基の導入により、AE環フラグメントの合成を完了した。本フラグメントから、我々が既に報告した変換により、タラチサミンを不斉合成できるため、新たなタラチサミンの不斉合成経路を確立できた。 また、C19ジテルペンアルカロイドの合成中間体から新たな骨格変換反応を見出した。これは、今後の新たな戦略での全合成に向けて極めて重要な知見である。 以上のように、本年度は、今後の研究推進に向けて重要な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、カップリング反応に用いるフラグメントの1つであるAE環部の不斉合成を行った。このフラグメントを用いて、研究計画にあるフラグメントへと導くことができると考えられるため、本成果は、研究推進のため重要なものである。また、C19ジテルペンアルカロイドの合成中間体から新たな骨格変換反応を見出した。これを応用できれば、研究計画に記載の反応以外の手法での全合成が可能になりうる。従って、本年度得られた研究成果は、今後の研究推進に極めて重要なものであり、概ね順調に進行したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度合成を実現したAE環フラグメントから、ラジカル反応基質の合成に向け、C3位の酸素官能基導入を行う。その後、官能基化されたC環との連結反応を経て、ラジカル環化基質へ導き、鍵反応となる連則反応による骨格を検討・実現する。本反応を様々な基質に適用することで、C19ジテルペンアルカロイドの統一的な合成法へと昇華し、複数の天然物へ導く。また、本年度見出した骨格構築法を応用したC19ジテルペンアルカロイド合成も検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、新たな不斉合成法の確立や合成終盤の検討を行ったため、当初の計画よりも大きいスケールでの実験を行わなかった。そのため、試薬使用量が抑えられたため、次年度使用額が生じた。来年度は、基質の大量合成も行う計画であり、より多くの試薬や消耗品を使用するため、本年度の未使用額は、来年度の使用予定額と合わせて来年度に使用予定である。
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