2023 Fiscal Year Research-status Report
Kinetic resolution of chiral carboxylic acids bearing a quaternary carbon center by molecular recognition-type sulfide catalysts
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23K04752
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
白川 誠司 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (60459865)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 不斉合成 / 速度論的光学分割 / 分子認識 / 不斉四級炭素 / カルボン酸 / ラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
独自に開発した分子認識型キラル二官能性スルフィド触媒によるブロモラクトン化を利用し、不斉四級炭素を有するラセミ体カルボン酸の速度論的光学分割を検討した。カルボン酸基質としては、不斉四級炭素上にアリル基とプロパルギル基を有するキラルカルボン酸の速度論的光学分割に挑んだ。このラセミ体カルボン酸は、不斉炭素上にアリル基とプロパルギル基という類似の化学的および立体的特徴を持つ官能基が導入されているため、触媒によるカルボン酸基質のエナンチオマー認識が容易ではなく、極めて挑戦的な速度論的光学分割であると位置付けられる。まず、用いるキラル二官能性スルフィド触媒の構造が、本速度論的光学分割に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、ヒドロキシ基を有するキラル二官能性スルフィド触媒が、本速度論的光学分割には効果的であることを明らかにした。また、種々のコントロール実験により、本スルフィド触媒における二官能性設計の重要性を明らかにした。キラル二官能性スルフィド触媒のファインチューニングに加え、用いる臭素化剤の構造および用いる反応溶媒を注意深く最適化することで、不斉四級炭素上にアリル基とプロパルギル基を有するキラルカルボン酸の効率的な速度論的光学分割が実現できた。本手法を用いることで、不斉四級炭素を有するキラルカルボン酸を極めて高い光学純度で得ることができた。また、本手法により、不斉四級炭素を有する光学活性γ-ブチロラクトン類を得ることにも成功した。さらに、ここで得られた光学活性カルボン酸およびγ-ブチロラクトン化合物の有用性を示すため、種々の変換反応へ適用し、有用光学活性化合物のライブラリー合成に展開できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した、不斉四級炭素を有するラセミ体カルボン酸の速度論的光学分割を、独自の分子認識型キラル二官能性スルフィド触媒を用いることで実現した。これらの成果の一部に関して、すでに学会発表および国際誌への論文発表を行なっており、順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において得た知見を生かし、さらに難易度が高い、不斉四級炭素を有するラセミ体カルボン酸の速度論的光学分割に挑戦する。例えば、不斉四級炭素上に構造が少しだけ異なる官能基を複数導入した、ラセミ体カルボン酸の速度論的光学分割を実施する。独自に開発したキラル二官能性スルフィド触媒は、キラルカルボン酸基質に対する高い不斉分子認識能を有することを実証済みであり、本知見の活用により、他の触媒手法では困難な速度論的光学分割も実現できると考えている。必要に応じて、キラル二官能性スルフィド触媒構造の再設計を行い、速度論的光学分割における新たな境地の開拓に挑む。
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Causes of Carryover |
計画当時予定していた、研究補助謝金の支払いが発生しなかったため、その分が未使用予算として翌年度に繰り越されることになった。使用する薬品類の価格高騰に伴い、物品費の支出が計画時より多くなることが予想されるため、次年度に繰り越された予算は、物品費の購入へ充当する予定である。
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