2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K04759
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
門口 泰也 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (40433205)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | α-アルキル化反応 / アルデヒド / 還元剤無添加 / パラジウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アルデヒドを用いて、カルボニル基に隣接するα位の炭素原子を伸長(アルキル化)することで、様々なカルボニル化合物への変換が可能な新手法の開発を目指している。通常、アルデヒドとカルボニル化合物の反応では、アルドール縮合によりα,β-不飽和カルボニル化合物が生成する。したがって、従来法ではアルデヒドを用いてα-アルキル化体を得るために、高毒性の一酸化炭素や可燃性の水素といった危険を伴う恐れのあるガスを還元剤として用いていた。本研究で開発する反応は、これら還元性ガスを使用しないことから、安全性の高い実用的な反応として、プロセス化学への適用が期待される。 反応条件の最適化を目的として、アセトフェノンとp-アニスアルデヒドを原料として、触媒と塩基の種類と当量、溶媒と反応温度、p-アニスアルデヒドの当量について精査した。その結果、2当量のp-アニスアルデヒドを用いて、5 mol%の酢酸パラジウム(II) [Pd(OAc)2]、2.4当量のナトリウムt-ブトキシド(NaOt-Bu)共存下トルエン中アルゴン雰囲気下80℃で撹拌することで、目的の反応は効率よく進行し、アルドール縮合成績体は全く生成せず、対応するα-アルキル化体が93%の単離収率で得られた。なお、NaOt-Buを4当量に増量すると、アセトフェノンが還元された1-フェニルエタノールの生成が確認された(7%生成比)。この結果は、NaOt-Buが還元剤として作用することを示唆している。 反応系に存在する微量の水が水素源となる可能性を調べるために、上記の最適条件に2当量の水を添加したところ、1H NMR比で7%ではあるが、1-フェニルエタノールが生成した。今後重水素の添加により、生成物への重水素の取り込みを調べることで、本反応における水の関与を明確にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り1年目で、アルデヒドをアルキル化剤とするケトンのα位のアルキル化反応の反応条件を最適化することができた。反応機構についても、水の関与の可能性を掴みつつあり、本研究は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に確立した反応条件に基づいて、置換基の種類や置換位置が異なるベンズアルデヒドのほか、ナフトアルデヒドや複素芳香族アルデヒドなど様々なアルデヒドを用いてアセトフェノンのα-アルキル化反応を検討し、基質適用性を明確にする。カルボニル化合物についても、ベンゼン環に置換基を持つアセトフェノンやプロピオフェノン、N,N-ジメチルアセトアミドなどの適用性を精査する。 令和6年度は、反応機構解明に向けた検討も進める。本研究が対象とする反応では、水素を添加しなくともアルドール縮合成績体(カルコン)のアルケン部位が還元されている。そこで、反応過程での水素発生の有無を明確にする。本申請研究のアルデヒドによるアルキル化反応とスチレンの接触水素化反応を同一気相で別個に実施し、スチレンの水素化の有無により、アルキル化反応での水素の生成を証明する。同時に、水素発生の有無を直接証明するために、反応系の水素濃度の定量分析を大学外の分析機関に依頼する。また、令和5年度の検討で、系内に微量に存在する水が水素源として働く可能性が認められている。重水(D2O)の添加により、生成物中への重水素の取り込みが確認された場合、水が水素源と同定できる。さらに、カルコンを原料にして、塩基や触媒さらにはベンズアルデヒドやベンジルアルコールを添加した場合と添加しない場合での反応を実施し、アルケン部位の水素化の効率を比較する。加えて、本反応における一電子移動の関与を明確にするために、一電子補足剤やラジカル補足剤の添加による反応阻害効果を検討する。これらの結果を総合的に考慮し、本反応の反応機構を提示する。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、系統的な精査により反応条件を最適化するために、有機合成・反応装置ケミストプラザCP1000(柴田科学)を購入した。次年度は、機構解明研究を効率よく実施するために、令和5年度分の残額を令和6年度に移行し、ガス(水素濃度)分析と微量金属定量分析の費用に充てる。
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