2023 Fiscal Year Research-status Report
多核ヒドリドクラスターを触媒とした光による有機分子からの水素生成制御
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23K04781
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
高尾 昭子 (稲垣昭子) 成蹊大学, 理工学部, 教授 (00345357)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 二核 / イリジウム / ヒドリド錯体 / 不斉配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、二座リン配位子 (L)を有する二核、三核イリジウムヒドリド錯体の系統的な合成法を開発し、光を用いた反応開発に取り組んできた。二座配位子Lを、BINAP配位子のように嵩高いものを選択することにより、選択的に二核イリジウムペンタヒドリド錯体 [(L)IrH5Ir(L)]+ が生成することも見出している。即ちL として不斉配位子を導入することが可能であり、R/S-BINAP をはじめ、SEGPHOSなど様々な不斉リン配位子を導入することも可能である。これらの錯体合成において、不斉配位子(L*) を有する前駆体 [(L*)Ir(cod)]+ (cod = 1,5-cyclooctadiene) を選択することにより、(R,R)-, (S,S)- などの組み合わせを有する二核錯体[(L*)IrH5Ir(L*)]+を高収率で合成できる。また、合成条件を工夫することにより、(R, S)- の組み合わせを有する二核錯体の作り分けと単離に成功した。これらの錯体はいずれも高い反応性を有することから、三次元的な不斉反応場を提供しうる化合物である。2023年度において、このような一連の化合物の合成に成功し、不斉光源であるCPL光を照射することに伴う、重水素化反応性を検討した。(R,R), (S,S), (R,S) の異なるキラリティーを有する錯体に対し、右偏光のCPL, 左偏光のCPLを照査することによる反応性の差異を調査した結果、左偏光のCPL光を照射したほうが重水素化体の生成比が高いことが分かった。バッチ間の差異や、フィルターの誤差等注意深く精査することによって再現を確かめる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究体制がある程度整ってきたため、研究はおおむね順調に進捗しているが、令和6年度においては、研究室の移転(大学内の新棟への移転の為)を控え、様々な装置が一定期間利用できなくなり、かつ移設に伴い実験が中断するため、研究進捗状況への影響が懸念される。しかしながら、第一段階である、多様な配位子を含む二核錯体の合成と生成に関する知見を得た。現在はこれらを論文としてまとめるために詳細なデータを収集している。
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Strategy for Future Research Activity |
反応の触媒となる様々な二核イリジウムヒドリド錯体の合成に成功したことから、まずはこれらの錯体の光物性を調査するとともに、特に不斉配位子を持つ錯体群に注目し、これらのCPL光に対する安定性や反応性を調査することを予定している。これらの錯体は配位子単独の発光性よりも長波長側により強い発光を示す。CPL発光とあわせて系統的に調査する予定である。また光励起状態においてどのような励起種を生成するのかを理論化学の観点から、解明するつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、消耗品を他の予算で賄うことができたため、若干予定よりも少ない支出で済んだ。2024年度は、配属学生が増え、研究の進捗に伴いより一層の消耗品支出(たとえばアルゴンガスや試薬類)に加え、測定に関わる費用が生じるため、それらに用いる予定である。
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