2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of peptide-linked supramolecular photocatalysts for Z-scheme artificial photosynthesis
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23K04784
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
石田 斉 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30203003)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 二酸化炭素還元 / ルテニウム錯体 / ペプチド / 光触媒 / 人工光合成 / Zスキーム型 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の資源・環境問題に関連して、CO2資源化を目的とする人工光合成に注目が集まっている。特に金属錯体を触媒・光増感分子として利用する光触媒反応は、各機能性分子を分子レベルで合成できることから、より天然光合成系に近い系を開発することが期待される。しかしながら、これまでの光化学的CO2還元触媒反応は、人工光合成の還元末端反応として注目される一方、還元半反応として研究されることから、光触媒反応において犠牲試薬(電子供与分子)を利用することが批判されてきた。このことから、本研究では人工光合成を実現するために、水の酸化触媒反応とCO2還元触媒反応を連動させ、水を酸化することによって得た電子をCO2還元に用いる人工光合成系の開発を目的とする。特に、水の酸化からCO2還元までのエネルギーを可視光で達成するために、天然光合成のように2種類の光増感分子の励起エネルギーを利用したZ-スキーム型人工光合成の実現を目指す。このような系を開発する上で最大の問題は、複数の異なる機能性分子をいかにして連動させるかという点であるが、本研究では、研究代表者がこれまで行ってきたビピリジン型非天然アミノ酸を用いたペプチド合成の手法を利用することによって、複数の機能性分子をペプチド結合により連結させた超分子光触媒を開発することを計画している。 研究初年度である2023年度は、Zスキーム型人工光合成に利用可能な、2種類の酸化還元電位が異なる光増感分子を探索し、それらのモデル錯体の合成およびX線構造解析、光物性(発光量子収率、発光寿命など)を明らかにした。さらにその配位子をビピリジン型非天然アミノ酸に置換することに成功し、ペプチド鎖で連結させることが可能となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度である今年度は、2種類の酸化還元電位が異なるルテニウム錯体を光増感分子として選択し、それらのモデル錯体を新規合成した。単結晶が得られたことからX線結晶構造解析に成功し、また発光挙動から励起状態寿命が触媒反応を進行させるのに十分長寿命であることも確認できた。さらにこれらの錯体の配位子をビピリジン型非天然アミノ酸に置換することによって、2種類のルテニウム錯体をペプチド鎖で連結させることにも成功した。以上のことから研究は順調に推移していると言えるが、2種類の光増感分子間の電子移動を効率化するために、2分子間に電子メディエーターとなる分子を導入する必要があり、一部はペプチド鎖に導入することができたが、さらなる探索が必要であることが明らかとなり、現在、その研究を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2種類の光増感分子間に配置する電子メディエーター分子の探索を継続し、より効率よくZスキーム型電子移動を推進する系の確立を目指す。また、水を酸化する触媒については近年、様々な研究が報告されており、それらの研究成果を参考にしながら、ビピリジン型非天然アミノ酸を導入した酸化錯体触媒の合成を行う。次年度に関しては、電子供与能が低く1種類の光増感分子では光化学的CO2還元が進行しない電子供与体を用いて、2種類の光増感分子を連結させることで触媒反応が進行するかどうかについても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究推進のためにビピリジン型非天然アミノ酸の委託合成を行った。経費としては委託合成のため「その他」に分類されるが、実質的には消耗品費に該当する。しかしながら、最近の物価高騰の影響から非常に高額になり、研究計画では、旅費・人件費を計上していたが、これらを使用せずに研究を進めていった結果、当初の研究計画からのずれが生じた。次年度に関しても、物価高騰の影響で消耗品費の増加が見込まれることから、旅費・人件費の支出を抑えながら進めることが考えられるが、基本的には使用計画は変わらないと考えている。
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Research Products
(15 results)