2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a chemical sensor for characterization of biodegradable polymers
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23K04815
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
大川原 徹 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (50632650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 利和 九州大学, 工学研究院, 准教授 (20643513)
松嶋 茂憲 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 教授 (80229476)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ピロール / 凝集誘起発光 / 蛍光 / 結晶構造解析 / ポリヒドロキシアルカン酸 / 水溶性 / 理論計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
凝集誘起発光性(AIE)色素は、溶液状態など分子が自由に運動できる状態では発光を示さず、固体状態など動きが拘束される環境下において強い発光を示す色素である。本研究では、電気的に中性でありながら比較的高い水溶性を有し、なおかつAIE特性を有するピロール系蛍光色素を開発するため、ピロールの側鎖にアルデヒド基を有するものを原料とし、種々の活性メチレン化合物を反応させることで簡便に置換基の異なる多数の類似化合物を合成する手法を確立した。合成したピロール系蛍光色素の一部は、ポリメチルメタクリレートのような高分子媒体中に導入すると発光性を示すだけでなく、色素の導入量によって発光色が異なることが分かった。 続いて、凝集誘起発光性を示すピロール誘導体の中で、単結晶X線構造解析と固体発光スペクトルの双方の結果を得られているものについて、分子間相互作用と固体発光波長の相関性を評価した。結晶構造中で二分子会合体を形成しているものについてはエキシマ-発光のような長波長発光を示し、それ以外のものについては短波長側に発光を示すなど、同種の分子でも2種類の発光パターンがあることが示唆された。また、一部の化合物は、結晶多型による蛍光波長の変化を示したことから、外部環境に応答して異なる発光色を示すことでイメージング色素としての応用が期待できることも明らかになった。 結晶構造を予想することができるCONFLEXを用いた配座探索では、ピロール環付近の側鎖置換基が嵩高いとJ会合体のようなスタッキング構造が安定となり、メチル基などの立体的に小さい置換基がある場合にダイマー構造を形成する方が安定となる傾向があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アルデヒド基を有するピロールと活性メチレン化合物との反応による新規凝集誘起発光性ピロール誘導体の合成に成功した。また、単結晶X線構造解析および結晶構造の理論計算が可能なCONFLEX9を用いることで、ピロール誘導体は側鎖置換基の違いによって、固体中において二分子会合体からのエキシマ-発光のような長波長発光特性を示す場合と、斜めにずれながらπ-π相互作用によってスタッキングし比較的短波長側に発光を示す場合の2種に分類できる傾向が見られた。このとき、側鎖の電子求引性、電子供与性といった電子的効果よりは、立体的な要因によって結晶中での安定なパッキング構造が影響を受け、それが上記の発光特性の差異につながっていると現在考察している。 一方、生分解性を有するポリマー中での色素の発光挙動に関する評価は遅滞している。今後、近隣大学で微生物を扱うことができる研究者との連携を深め、共同研究を推し進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
凝集誘起発光性および生体内に適用可能な水溶性をもたらすための分子設計をそれぞれ確立するために、Gaussian16による理論計算を進めるとともに、結晶構造と蛍光挙動の関係性を評価していく。結晶構造解析においては、ARIMを通じて、九州大学が所有する微小結晶での測定が可能なMicroMax-007HFを活用した測定を実施、現状よりも多くのサンプルについて構造解析を行う。また、分担者と協力し、発光量子収率、発光寿命の測定を行い、基礎的な光物性のデータを整える。 市販の生分解性ポリマーを用いてフィルムを作成し、合成した化合物との相溶性を評価する。温度可変実験によりポリマーのガラス転移温度Tgなどの熱的性質を可視化できることを確認する。 ポリマーの内部でそのポリマーの構造や熱的性質を反映して色や発光強度が変化するAIE色素を用いて、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)産生微生物に対する染色を実施する。菌体内に蓄積されるPHAの量や高分子構造、熱的性質に応じて発光挙動に変化が見られることを確認する。
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Causes of Carryover |
2023年度は研究補助学生が想定よりも少なく、期待したほどの進展がなかったため、外部機関等での測定に要する機器使用料、旅費等が少なかった。2024年度はより多くの学生を当該研究課題の遂行の補助に充てることができるため、九州大学が管理するマテリアル先端リサーチインフラ登録装置・単結晶X線構造解析装置を積極的に活用して、支出していく計画である。
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