2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Composition and Spatial Distribution of Nitrogen Compounds in the Atmospheric Aerosols
Project/Area Number |
23K04825
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 篤博 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70416098)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 大気エアロゾル / 窒素化合物 / 大気沈着 / 海洋性大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大気成分のうち特に人間活動に密接に関係がある窒素化合物に着目し,人の移動や経済活動の変化,硫黄酸化物や窒素酸化物など酸性物質の減少,アンモニアの増加といった発生源の変化に伴う大気組成や濃度変動の解明,また,窒素化合物の成分のうち生成過程や存在割合,発生源など不明な点が多い有機態窒素の動態の解明を目的とする。このため,大気エアロゾル,ガス状物質,大気降下物の化学成分や濃度の測定を行い,これらのことを2地点以上の複数地点で同時観測を行い,それらを同一の測定・解析方法を行うことでその実態解明につなげる。初年度は,観測方法とそれぞれの地点での設置方法を決定した。観測地点は,大気環境を構成する要因が大きく異なる静岡県下田市(海洋)と神奈川県藤沢市(都市郊外)の2地点で,2023年8月21日~9月6日(夏季)と2023年11月22日~12月14(冬季)の期間,大気観測を行った。 捕集した試料は,ローボリウムエアーサンプラーにより2.5μmを境に微小粒子と粗大粒子に分級した大気エアロゾル,大気降下物,フィルターに薬液を含浸させた4段のフィルターパック法によるガス状物質であった。また,大気粒子状物質(PM2.5)の測定を行った。化学成分の分析には,イオンクロマトグラフ法,高温触媒酸化法と化学発光式ガス分析器による全窒素であり,現在,化学分析を進めている。観測期間中,2023年12月9日~10日にかけて,黄砂の影響を受けていると考えられ,大気汚染物質との関連や成分や濃度の変化を検討していく。夏季には,これらの地域で人為起源物質の影響を受けにくいバックグランド濃度の観測を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,初年度に観測準備と設置場所を決定し,冬季に観測を行う予定であったが,前倒しに夏季に観測を行うことができた。準備や観測は順調に進んでいると考えている。一方で,海洋や都市郊外と環境が異なる山岳地帯の富士での観測も予定していたが,施設の都合もあり行うことができなかった。また,化学成分については,全窒素分析はスムーズに行うことができたが,イオンクロマトグラフの装置の不調により,主要無機イオン成分の分析が予定通りに進まなかった。現在,測定を進めているところで,データが出次第,解析を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,静岡県下田市(海洋)と神奈川県藤沢市(都市郊外)の2地点同時観測を季節ごとに行うとともに,経年変化を調査するためのデータを蓄積していく。また,令和6年度は,静岡県富士宮市(山岳地帯)での観測に着手する。機材と人的なものから,富士宮市と藤沢市,下田市と藤沢市の2地点ずつ同時観測を行う予定である。得られた試料の化学成分分析を進めていく。最終的には,藤沢市,下田市,富士宮市の3地点同時観測を行い,構成成分比,粒径分布,濃度レベル,発生源や大気中での変化について更なる知見を得ることを目指す。また,得られたデータより,大気から生態系に沈着する窒素化合物の定量化や影響予測を行う。 今後の発生源の変化に伴う大気汚染物質の変動をモニタリングすることは,気候変動の予測や今後の光化学オキシダント,PM2.5対策の観点からも必要である。
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Causes of Carryover |
計画に基づいた支出であった。しかし,端数にあたるところが残金となった。残金が判明した時期や残額から,当該年度に使用するより,次年度使用にすることで有効活用できると判断した。令和6年度交付金とともに,令和6年度から新たに始める富士宮市での野外観測に必要な消耗品に使用する予定である。
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