2023 Fiscal Year Research-status Report
サスティナブルC-H結合官能基化反応を志向したジアリールヨードニウム塩の配位子制御
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23K04827
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊嶌 孝太郎 立命館大学, 薬学部, 助教 (40609880)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アリール化 / 超原子価ヨウ素 / 含フッ素有機化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジアリールヨードニウム塩を用いるヘテロ原子求核剤のアリール化反応において、その求核剤の拡張を行い、合成法が限定的なN-アリールイミノエーテルや含フッ素アリールエーテルおよび含フッ素アリールエステルの合成法を開発した。 N-アルコキシベンズアミドは窒素原子および酸素原子の二つの求核部位を持っており、N-アリール化およびO-アリール化の両方が進行して2種類の生成物を与える。ジアリールヨードニウム塩の一方のアリール基をトリメトキシフェニル基としたTMP-ヨードニウム塩を用い、基質にN-tert-ブトキシベンズアミドを用いたところ、酸素原子上でのアリール化が優先的に進行してN-アリールイミノエーテルを高収率で与えた。 含フッ素求核剤としてフルオロアルコールやα-フルオロ酢酸塩を用い、ジアリールヨードニウム塩によるアリール化反応に取り組んできた。含フッ素アルコールはフッ素の高い電気陰性度に起因して求核力が低い。フルオロアルコールと水素化ホウ素ナトリウムから容易に調整可能なテトラキスフルオロアルコキシホウ素ナトリウムを用いて、TMP-ヨードニウム塩との反応を行ったところ、高収率にてフルオロアルコキシアレーンが得られた。 α-フルオロ酢酸はさらに求核性が低く、ナトリウム塩とTMP-ヨードニウム塩を用いて加熱した場合においても目的とするアリール化は進行しなかった。銀触媒と1,10-フェナンスロリン配位子を添加した際に高収率で対応するα-フルオロ-O-アリール酢酸エステルが高収率にて生成した。イブプロフェンやジクロフェナクなどのアリール酢酸系医薬品の含フッ素アリールエステル誘導体の合成も可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ジアリールヨードニウム塩を用いる反応において、適用求核剤の拡張と芳香族C-H結合の官能基化反応およびダミーリガンドリサイクルシステムの開発に主眼を置いている。2023年度は主に求核剤の拡張に焦点を当てて研究を行ってきた。特に含フッ素官能基導入法の開発は創薬研究において不可欠な研究トピックであり、有用性が高いと考えている。含フッ素アリールエーテルおよび含フッ素アリールエステルの合成法について、すでに国際学会などで発表を行っており、現在は論文投稿に向けて準備を行っている。一方、N-アリールイミノエーテルの選択的合成についてはすでに論文投稿を行い、Adv. Synth. Catal. 誌に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に引き続き、求核剤の拡充を行いつつ芳香族C-H結合の官能基化反応の開発に取り組んでいく。求核剤の拡充については、特に含フッ素化合物のアリール化に焦点を当てる。芳香族C-H結合の官能基化反応については、すでにオルトトリフルオロメトキシヨードアレーンから合成したヨードニウムトシラートが芳香族C-H結合の直接ヨードニウム化に有効であることを見出しており、本反応を活用して含フッ素官能基化を行っていく。種々のフルオロアルコキシ基をもつヨードアレーンについて検討を行い、合成容易さと反応性を兼ね備えたダミーリガンドを探索する。必要に応じて計算化学を活用し、ダミーリガンドの設計指針とする。芳香環を有する医薬品分子を用いてレイトステージでの含フッ素官能基導入へと展開していく。
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Remarks |
所属研究室のホームぺージにて研究業績を掲載している。
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