2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K04833
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日隈 聡士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70714012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 豪 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80596685)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 一酸化二窒素 / N2O / 触媒 / 分解 / 温室効果ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な担持Ru触媒のN2O転化率の温度依存性を比較した。いずれの触媒もNOの副生を示さなかったことから、N2OはN2とO2に分解されたと推定された。Ru/SnO2およびRu/ZrO2では、N2Oのlight-off温度は約200 °Cであったが、Ru/Nb2O5はほとんど活性を示さなかった。触媒活性はN2Oの50%転化を達成したlight-off温度(T50)で比較している。T50は、SnO2 < ZrO2 < Al2O3 < CeO2 < Ta2O5 < TiO2 < Nb2O5の順に増加した。このT50の順序は、H2-温度プログラム還元(TPR)実験で測定した還元温度の順序Al2O3 < SnO2 < ZrO2 < CeO2 < Ta2O5 < TiO2 < WO3 < Nb2O5とほぼ一致している。これは低い反応温度におけるRu(RuO2)の酸化還元特性がN2O分解活性と関係していることを示唆している。還元温度の低い担持Ru触媒ほど、金属分散度が高い(粒子径が小さい)傾向にあることから、高分散のRu(RuO2)粒子がN2O分解反応に機能していると考えられる。Ru/CeO2は高い金属分散性(18%)を示したが、活性は中程度であった。Ru (RuO2)の還元性が低い反応温度でのN2O分解活性と関連していることが示唆された。以前の報告によれば、N2Oの分解メカニズムはN2Oが活性部位(配位不飽和な表面金属イオン)に吸着してN2と表面Oが形成され、その後、表面Oと他の表面Oが結合して脱着すると報告されている。担持された配位不飽和な表面Ru (RuO2)サイトもN2Oの吸着(活性化)とその後の表面Oの形成に必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
N2Oはオゾン層を破壊する温室効果ガスであり、約100年の長い寿命を示す。特に、その地球温暖化係数はCO2の約300倍である。世界中の国や国際機関が適切な緩和方法を導入しない場合、N2O排出量は2050年までに約2倍になると推定されている。N2Oの排出起源は主にエネルギー産業(燃焼プラントや化学プラント)・農用地・自然界であり、エネルギー産業の燃焼炉からの排出は局所的で高濃度である。これらの問題を解決するために、N2OをN2とO2に分解する触媒は、排出削減のための経済的な技術の一つである。これまで、N2O分解のための担持金属酸化物、貴金属、金属酸化物または複合酸化物触媒が研究されてきた2)。担持触媒に関しては、N2O 分解に対する活性は Ru, Rh, Ir > Pd > Cu > Fe > Pt > Ni > Mn の序列であることが報告されている2)。そのため、Ru種はN2O分解の有望な触媒になる可能性がある。現在までAl2O3, CeO2, TiO2, Nb2O5, ZrO2, Ta2O5, WO3 およびSnO2などの様々な金属酸化物をRu触媒の担体材料とした。担持Ru (5.0wt%)触媒はRuCl3の水溶液を含浸、乾燥後、空気中600 °Cで3時間焼成することによって調製した。担持Ru触媒は粉末X線回折(PXRD)、蛍光X線(XRF)、H2による昇温還元法 (H2-TPR)、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積測定、NH3ならびにNOによる昇温脱離法(NH3-, NO-TPD)、CO pulse化学吸着法およびフーリエ変換赤外(in-situ FT-IR)分光法で評価した。N2Oの触媒分解は大気圧の流通反応装置を用いて昇温法で評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
N2O触媒分解反応に対して担持Ru触媒の影響を包括的に評価した。様々な担体材料に担持されたRuの相は、PXRDによってRuO2に帰属された。担体Ru触媒のN2O分解反応のT50の順序とH2-TPRにより求められた還元温度(Tred.)の順序とに相関が認められた。すなわち、低温域の反応温度でのRu (RuO2)の還元特性が、N2O分解活性に関連していることが推定された。得られたNO-TPDプロファイルやin-situ FTIRスペクトルから、N2O/NOx吸着特性と触媒活性の間の相関関係が明らかになった。担持Ru (5.0wt%)触媒の中でも、特にRu/SnO2がN2O触媒分解反応に高性能を示した。5.0~20wt% Ru/SnO2のlight-off温度とT50はほぼ同じであったことから、最適なRu担持量は約5.0wt%であることがわかった。H2Oの存在によって、5.0wt% Ru/SnO2の不活性化、あるいはN2O吸着の阻害が誘導されたと考えられる。今後も低温からN2Oを分解できる新規触媒の開発を進める。加えて、農用地や自然界からもN2Oが多く排出されているため、農業分野のN2O排出抑制技術と協力関係を築き共同研究や開発を検討したい。
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Causes of Carryover |
触媒合成にかかる消耗品が購入できなかったため。
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