2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒドロアリール化反応を利用した副生成物を排出しない高分子半導体合成技術の開発
Project/Area Number |
23K04835
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 有機金属化学 / 高分子半導体 / 重付加 / ヒドロアリール化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、芳香族化合物のC-H結合を反応点としてアルキンに挿入するヒドロアリール化反応を利用した重付加反応により、種々のアリーレンビニレン型π共役高分子を合成する技術開発を行うものである。従来の重縮合による合成では化学量論量の副生成物を排出するのに対し、本重合法は重付加であり本質的に副生成物を排出しない。これにより、簡便な分離・精製操作で高純度な高分子半導体を容易に提供することができる。 本年度の研究では、チオフェンモノマーの側鎖に配向基としてアミド基を導入することで、温和な条件下で位置選択的にヒドロアリール化反応が進行し、ビニレン結合選択性が高度に構造制御されたアリーレンビニレン型π共役高分子を合成できることが分かった。 一方、多環芳香族炭化水素であるナフタレンモノマーの場合は、ピラゾール基が配向基として有効に働くことが分かった。ピラゾール基を配向基として導入することでナフタレン骨格のC-H結合が反応点として働き、効率よくヒドロアリール化反応が進行し、ビニレン結合選択性が高度に構造制御されたアリーレンビニレン型π共役高分子を合成できた。さらに、ピラゾール基を導入する結合位置によってモノマーの反応性とポリマー主鎖の連結位置を高度に制御できることを明らかにした。また、この分子設計はカルバゾールモノマーにも適用できた。 得られたポリマーは有機EL素子の発光層や有機薄膜太陽電池のp型半導体として機能することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チオフェンモノマーの側鎖に配向基としてアミド基を導入することでアルキンの2,1-挿入が起こりやすくなり、高度なビニレン結合選択性が達成できた点は大きな進展といえる。π電子過剰及びπ電子欠如系ユニットが導入された複数のジインモノマーとの重合を実施し、この重合が種々のアリーレンビニレン型π共役高分子を合成する技術として利用できることを明らかにした。また、得られたポリマーは高分子半導体として機能することから、本研究の目的の一つは概ね達成できたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の研究成果に基づき、さらに広範な構造からなるアリーレンビニレン型π共役高分子を合成するためのモノマーの設計と重合を行う。また、重合に用いる触媒を精査することで副反応を抑制し、高度に構造制御されたアリーレンビニレン型π共役高分子を合成する技術開発を進める。
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