2023 Fiscal Year Research-status Report
Precise control of the thermal dissociation behavior of substituted anthracene photodimer and application to dismantlable materials
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23K04842
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐藤 絵理子 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30422075)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光二量体 / 熱解離 / 酸触媒 / 加水分解 / 架橋ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、熱的に安定な置換アントラセン光二量体の解離を特定条件下でのみ促進し、安定性と迅速解離を両立させることを目指し、外部因子による置換アントラセン光二量体の熱解離挙動の精密制御に取り組んだ。予備的検討によって、固体状態では、置換アントラセン光二量体の融点やマトリックス材料との相溶性が熱解離挙動に強く影響することを明らかにしている。これを踏まえ、まず均一溶液系で精密かつ定量的な解離挙動の評価を行った。イミノ基を導入したアントラセン誘導体およびその光二量体の合成を行い、モデル化合物として用いた。加水分解を促進する水と酸の添加量に注目し、イミノ基の加水分解およびアントラセン光二量体部位の解離挙動を詳細に追跡した結果、イミノ基を導入したアントラセン光二量体は酸触媒によって解離が著しく促進されるが、イミノ基が加水分解しアルデヒド基に変換されると解離が抑制されることを明らかにした。また、イミノ基にヒドロキシアルキル基を導入することで加水分解が促進されることも明らかにしている。これらの基礎的知見を高分子の分解制御に応用することを目的とし、イミノ基含有アントラセン光二量体骨格を導入した線状ポリマーおよび架橋ポリマーの合成にも取り組んだ。二官能アミンおよび三分岐アミンを用い、合成条件を最適化することで分解を抑制した条件下で溶液重合によって線状ポリマーおよび架橋ポリマーゲルを合成することに成功した。架橋ポリマーゲルは室温では熱的に安定であるが、酸触媒存在下では分解し可溶化することを見いだしており、外部刺激により分解制御が可能な高分子材料としての可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り研究を進めている。2023年度計画通り、低分子モデル化合物を用い均一溶液中での解離挙動を詳細に追跡し、特定の官能基としてイミノ基を有するアントラセン誘導体光二量体の解離が特異的に促進されることを明らかにしている。この知見を架橋高分子に展開し、外部刺激により分解制御が可能な高分子材料としての可能性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の成果を展開し、アントラセン誘導体光二量体を脱架橋可能な架橋ユニットとして含む種々の架橋ポリマーの合成を行う。高分子材料への応用を前提とし、無溶媒系での重合を中心に検討し、分解を抑制できる条件下で効率的に架橋ポリマーを合成できる重合条件を検討する。得られた架橋ポリマーについて、解離や加水分解に伴う脱架橋挙動を評価するとともに、脱架橋に伴う物性変化を活用した材料設計を行う。
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Causes of Carryover |
低分子モデル化合物を合成する際、単離収率が想定していたより高く、合成原料や精製に用いる溶媒やディスポーザブルカラムの使用量が減ったため、次年度使用額が生じた。また、装置のメンテナンス等も必要なかったことから、次年度使用額が生じた。これらは、次年度以降、研究を効率的に進めるための試薬購入や成果発表に関係する経費に充てる予定である。
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