2023 Fiscal Year Research-status Report
アミノカルボニル反応を基軸とする天然ポリカチオン由来材料の創出
Project/Area Number |
23K04870
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
牛丸 和乗 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10770703)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ε-ポリ-L-リジン / カルボニル化合物 / バイオベース高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微生物が生産するカチオン性高分子であるε-ポリ-L-リジン(ε-PL)とカルボニル化合物の反応を基軸とした「ε-PL修飾技術の確立」、および得られた「修飾ε-PL由来の機能材料の創出」を目指す。 本年度は基盤技術となる「ε-PL修飾技術の確立」に向けた検討として、ε-PLと各種カルボニル化合物の反応性評価および得られた修飾体の基礎的な特性評価を進めた。アルデヒド類を主とする十数種類のカルボニル化合物とε-PLの反応性を種々の条件で評価したところ、多くのカルボニル化合物が室温下でも効率良くε-PLと反応することが確認できた。 得られた化合物を回収して乾燥させたところ、その外観はゲル状固体と脆い固体の二種類に大別された。用いたカルボニル化合物の化学構造を考慮すると、前者はε-PLのアミノ基とカルボニル化合物が反応した後に転移反応が生じて架橋が起こった、すなわちメイラード反応を介して架橋された化合物、後者はイミン結合の形成で反応が止まった化合物と考えられる。既報[K.Ushimaru, et.al., ACS omega, 4, 9756-9762 (2019)]にて報告している通り、前者のゲル状固体はε-PLをエラストマー様の材料として利用する上では有用だが、メイラード反応は複雑かつ制御困難な転移反応から成る反応であるため、ε-PLを狙った構造に修飾するという点では不適であった。一方で、後者のイミン結合で反応が止まったε-PL由来化合物は化学構造の制御がしやすく、ε-PL修飾の前駆体として適すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標である「修飾ε-PL由来の機能材料の創出」に向けた基盤技術として、イミン結合で反応が止まった種々のε-PL由来誘導体を調製することができた。これら誘導体の調製法を検討する中で、本研究に適したカルボニル化合物の化学構造に関する知見を得ることができたため、現時点では順調に研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に調製法を確立したイミン化ε-PL誘導体の詳細な化学構造・物性評価も進める。化学構造や基礎的な物性が確認でき次第、当該誘導体を原料として二種類の機能材料(樹脂様材料および機能性分子)の創出を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は原料であるε-PL以外の試薬はいずれも安価な試薬を用いて実験が可能であったことに加え、適切な溶媒選択など反応系を工夫することで当初予定していた高真空度のエバポレーターを購入しなくても実験が順調に進行したことから、次年度への繰り越しが生じた。次年度は繰越額を試薬購入に使用して、本年度に得られた知見を応用した当初予定+αの新規ε-PL由来材料の創出も実現したいと考えている。
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