2023 Fiscal Year Research-status Report
ウニ状酸化ニオブ粒子を用いたガスセンサのナノ階層構造設計と高感度化
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23K04889
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
渕上 輝顕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20756704)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / ナノ階層構造 / 半導体式ガスセンサ / 高感度化 / 細孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、微構造を連続的に変化させたウニ状ナノ階層構造を一連のモデル材料として、それらのガスセンサ膜のセンサ特性、細孔や形態などの微構造、接合・化学状態を評価することで、ナノ階層構造による高感度化の主因を明らかにし、設計指針を得るとともに、高感度ガスセンサを創製することを目的としている。2023年度は、微構造の異なるウニ状ナノ階層構造体を得るために、合成温度と合成時間を精密に制御し、粒子合成を行った。合成時間を反応条件として、表面にナノロッドが存在しないウニ状粒子が得られた。また、2段階加熱によりナノロッドの延伸が可能であることを見出し、ウニ状粒子表面におけるナノロッドの成長度合いの制御が可能となった。その結果、ナノロッドの長軸径を10 nmから50 nm程度まで延伸させることができた。FIBによる断面形成とSTEMによる直接構造観察から、センサ素子表面に塗布されたウニ状Nb2O5粒子間に30 nm以上の間隙が形成している様子が観られた。ウニ状構造を形成していない単分散ナノロッド集積膜における細孔サイズが数 nm程度であることから、ウニ状Nb2O5粒子間に形成した比較的大きな細孔が、分子サイズの大きいガス(例:アセトンガス)に対する応答性の増大に寄与したことが明らかとなった。センサ特性では、ナノロッド構造の消失による感度の減少と選択性の変化が見られたことから、表面のナノロッドが高感度化に加えてガス選択性に寄与していることが示唆された。さらに、湿潤雰囲気のセンサ特性を評価したところ、SnO2ガスセンサや、単分散Nb2O5ナノロッドを用いたガスセンサと比較して、アセトンガスに対してppbオーダーの応答値を示したことから、水耐性を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウニ状粒子の微構造制御では、球状、放射状ナノロッド、ナノロッドを延伸させた試料が得られているが、延伸させる際に短軸径がわずかに増大しているため、2024年度も引続き延伸させる条件の検討が必要である。作製したモデル材料のセンサ特性は各種測定することが可能であったが、後述する自己集積膜については抵抗が高く、測定には下地層の厚みなど検証が必要である。高感度化の要因のひとつである、下地層との接合界面形成について、FIBによる加工を行い、微小な破断面を作製することができた。破断面に対してSTEM-EELsによる分析を行ったが、界面形成によるピークシフトは観られていない。これは、そもそも接合界面が形成されていないのか、試料の凹凸構造から界面近傍だけを分析できていないのか定かではない。こちらも引続き試料作製と併せて検討が必要である。比表面積や細孔分布については、サイズの微小さに加えて、対象物質の質量の小ささから測定することが困難であった。自己集積膜の作製では、アルミナチップ上にナノロッドの成長が可能となった。自己集積については2024年度に実施する内容であったが、今年度で達成することができた。また、金属ドープによる高感度化については、最終年度で実施予定であったが、ナノ構造制御の際に並行して進める必要があったため実施し、Alドープによる高感度化を達成した。この知見を基に、最終年度では他の金属種をドープすることで、感度や選択性の向上を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度で得られたナノ構造制御に関する知見を基に、ナノ構造の異なる粒子と集積構造膜を作製し、各温度で焼成することで、一連のモデル材料を作製する。これらの一連のモデル材料のセンサ特性を評価することで、高感度化の要因をさらに詳細に明らかにする。ウニ状ナノ構造の自己集積膜については、原料溶液中にセンサ素子を予め静置しておくことで、センサ素子のアルミナ基材部、Pt電極部の両方に析出させることが可能であることを2023年度に明らかにした。この手法を用いて、センサ素子上にウニ状Nb2O5粒子、球状のNb2O5およびナノロッドを集積させ、センサ特性を評価することで、粒子間の微構造がセンサ特性に及ぼす影響を調査する。高感度化の要因として下地層との接合界面の形成が考えられるため、FIB加工面に対してSTEM-EELsを用いて界面の状態を分析したが、凹凸構造から界面付近を分析することが困難であった。そこで、2024年度では、平滑なアルミナ基板等を用いて分析用試料を作製することで、STEM-EELsによる界面の分析を進める。また、比表面積の測定では、センサチップの極小なサイズから正確な測定が困難であったため、同様の組成と構造を有するNb2O5構造体をアルミナビーズ上に形成させ、これを比表面積の測定に用いる。金属ドープによる高感度化については、初年度でAlのドープが有効であることを明らかにした。この知見を基に、イオン半径がNbと近く、かつ酸素欠陥を生じやすい金属を主として、感度の増大に有効なドーピング種を検討する。
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Causes of Carryover |
本研究でモデル材料を作製するためのウニ状ナノ粒子の構造制御が計画よりも順調に進み、合成に必要な試薬、電子顕微鏡の試料ホルダ(グリッド)、電子顕微鏡の使用料が計画よりも抑えられた。また、ガス吸着法用の試料管を計画では4本購入予定であったが、まずは設計した試料管で測定可能かを検証するために、1本の購入にしたため、当該助成金が生じた。翌年度では、比表面積および細孔分布の測定に向けて試料管を再設計し、それらを購入する。また、STEM-EELs分析用に平滑なアルミナチップおよびグリッドを購入し、界面分析に供する。
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Research Products
(6 results)