2023 Fiscal Year Research-status Report
Electrolytic synthesis of two-dimensional sheets based on C3-symmetric metal complexes
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23K04895
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
廣津 昌和 神奈川大学, 理学部, 教授 (30312903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑村 直人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (80643791)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | C3対称 / ニッケル錯体 / キラルシッフ塩基配位子 / 電解酸化重合 / エレクトロクロミズム / 円偏光二色性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、C3対称金属錯体をモノマー単位とする二次元シート状物質を、電解重合により合成する手法を開発することを目指している。モノマーとして光学活性錯体を用いることで、円偏光二色性(CD)スペクトルにより積層パターンを評価する予定である。2023年度は以下の研究成果を得た。 (1) 光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミンを用いて、キラルなC3対称シッフ塩基ニッケル三核錯体を3種類合成した。これらをモノマーとして、サイクリックボルタンメトリーの多重掃引による高分子膜の形成を試み、いずれも膜形成の挙動を確認した。ITO電極上に高分子膜を作製することで、分光学的性質を調査し、エレクトロクロミズムの発現を見出した。また、走査電子顕微鏡による高分子膜の表面観察も行った。 (2) ニッケルシッフ塩基錯体の電解酸化重合の機構を明らかにするために、C3対称三核錯体の部分構造を有する単核錯体およびその二量体錯体を合成した。単核錯体の電解酸化により得られる化合物が、別途合成した二量体錯体と一致したことから、C-C結合形成部位を特定することができた。また、単核錯体と二量体錯体の電気化学的性質を調べることで、電解酸化重合の初期過程に関する知見を得た。 (3) 電解酸化重合により生成する高分子膜を評価する手法として、CDスペクトルの利用を検討した。光学活性な1,2-ジフェニルエチレンジアミンから誘導される2種類のシッフ塩基ニッケル錯体を用いてITO電極上に高分子膜を作製した後、CDスペクトルを測定した。モノマーとして用いた錯体は、溶液状態のCDパターンがフェニル基の配向に依存するが、高分子膜とした後も構造の違いを反映したCDパターンを示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一段階として、キラルなC3対称シッフ塩基ニッケル三核錯体の合成法を確立し、電解酸化重合による高分子膜の合成に成功した。高分子膜が二次元シート状であることは確認できていないが、エレクトロクロミズムや表面観察といった物性評価の段階へと推し進めることができた。また、電解合成技術の鍵となる反応機構の解明に向けて、合成と電気化学的手法の両面からアプローチすることができた。さらに、光学活性な高分子膜を作製し、そのCDスペクトルを測定・解析した。合成と物性評価の両面で予定していた研究成果が得られたことから、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
C3対称ニッケル三核錯体の電解酸化重合による高分子膜の形成が明らかとなったため、二次元シート状物質を得るために必要な電解条件を詳細に検討していく。高電位では高分子膜の劣化が見られたことから、より低電位で電解酸化重合を行うために、チエニル基を反応点とするC3対称錯体を開発する。作成した高分子膜については、表面観察に加え、X線回折測定により評価を行う。反応機構の解明にあたっては、三量体以上の形成過程も重要であることが示されたため、新たに三量体錯体の合成を行い、電気化学的性質を調査する。また、CDスペクトルによる分析手法を確立するため、モノマーとして単核錯体を用いたデータを蓄積することに加え、C3対称ニッケル三核錯体を用いて作製した高分子膜のCDスペクトルも調査する。
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Causes of Carryover |
2023年度は学内プロジェクトによる支援も受けることができ、その助成金の一部を本研究課題で予定していた学会旅費と試薬類の購入費に割り当てて研究を推進した。研究の進展に伴い、合成するべき錯体の種類と分析対象が増えてきたため、生じた残額を試薬および電極材料の購入費として2024年度に使用する予定である。
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