2023 Fiscal Year Research-status Report
カルコゲナイド欠陥相物性解析と短波長光エネルギー変換デバイスへの応用
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23K04899
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石塚 尚吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 首席研究員 (60415643)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | カルコパイライト / 銅欠乏層 / CuInSe2 / CIS系 / CuGaSe2 / 太陽電池 / 薄膜 / 光電気化学セル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、安価で高性能なワイドギャップ(ここでは禁制帯幅1.6-2.0 eV)材料による高性能エネルギー変換デバイスの実現を目的とした、カルコゲナイド材料の研究開発を主題とする。化学量論組成から外れた「欠陥相」と呼ばれるワイドギャップカルコゲナイド異相を、多元系化合物ならではの多様な元素組成組み合わせを勘案しながら、高性能なデバイス実現と新機能探索を実施している。初年度となる2023年度においては、三元系CuInSe2(In系)およびCuGaSe2(Ga系)を出発材料とし、これらにIII族元素アルミニウム(Al)を用いたCu(In,Al)Se2およびCu(Ga,Al)Se2混晶材料の薄膜作製と物性評価および制御を行った。In系において、CuAlSe2は比較的不安定であり、大気雰囲気中では数週間で分解してしまうが、Inとの合金化によって安定性が著しく向上すること、Cu(In,Al)Se2(CIAS)太陽電池はAlを含有しないCuInSe2太陽電池より高い変換効率が得られるが、C(In,Ga)Se2系におけるGaよりも性能向上可能なAl濃度範囲はかなり狭いこと、またCIAS薄膜中のAl濃度が増加すると、膜中のアルカリ金属濃度が減少する傾向が観察され、これは銅サイトのアルカリ金属置換欠陥の形成エネルギーが高い、または形成されたAl関連の複合欠陥が動力学的に安定しており、一度形成されるとアルカリ金属で置き換えるのが難しい可能性が示された。これまで、CIGS薄膜のバルク(結晶内部)内のアルカリ金属を直接観察することは困難だったが、この結果から、CIGS薄膜のバルク中にアルカリ金属が存在し、デバイス性能向上に寄与するいわゆるアルカリ金属効果が、界面だけでなくバルク中のアルカリ金属によって引き起こされている間接的な証拠を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示した、カルコパイライト化合物薄膜太陽電池(CIS系太陽電池)の分野において長年の課題であったアルカリ金属効果のメカニズム解明につながる成果を、CuInSe2薄膜へのAl添加によって実験的な検証に成功し、その研究成果が高インパクトファクター誌(Advanced Energy Materials, IF: 27.8, Q1)に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度はCuInSe2へのAl添加に注力することで新しい学術的知見獲得という成果が得られたが、令和6年度はさらに広禁制帯幅材料であるCuGaSe2にも研究対象を広げ、同様にAl添加効果の検証を行うことでその物性制御とデバイス特性の向上に向けて取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
開始当初は初年度に予定していた外注分析(二次イオン質量分析)による試料分析評価の一部を、2年目に作製予定の試料と合わせて実施する計画の見直しを行ったため。
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Research Products
(2 results)