2023 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of efficiency of light-energy conversion devices by introducing metal complexes and charge transport layers
Project/Area Number |
23K04908
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
萩原 英久 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (30574793)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 不均一系光触媒 / 水の光分解反応 / 有機半導体 / 光エネルギー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、水の光分解反応に活性を示す無機半導体酸化物光触媒の電荷分離を促進するために、電荷輸送を担う有機半導体を用いた表面修飾効果について検討した。 表面修飾する無機半導体光触媒として、これまでの研究において紫外光下で高い水の光分解活性を示すことが報告されている、ジルコニウムをBサイトに添加したタンタル酸カリウム(KTa(Zr)O3)を用いた。従来通りの調製法で合成したKTa(Zr)O3は、水分解反応における水素および酸素の生成比が化学量論からずれていたり、光触媒活性の再現性に問題が生じたりしていたことから、まず再現性の高いKTa(Zr)O3の調製法の確立を目指した。Aサイトカチオン量の増減や焼成温度の変更等、様々な調製条件を検討した結果、Bサイトカチオンの出発原料である酸化タンタルを分級してより細かい粒径に揃えることで、比較的再現性の高い光触媒活性を示すKTa(Zr)O3を調製することに成功した。 さらに、KTa(Zr)O3の電荷分離を促進する電荷輸送層として様々な有機半導体を表面に修飾し、光触媒活性に与える効果について検討した。その結果、主に有機薄膜太陽電池で光励起電子のアクセプターとして用いられる[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)や[6,6]-フェニル-C71-酪酸メチル([70]PCBM)等のフラーレン誘導体を用いることで、水の光分解活性が向上することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標はKTa(Zr)O3の電荷分離寿命を長期化することで水分解活性を向上させる有機半導体材料を幅広く探索し、金属錯体や他の有機半導体材料との複合効果とその発現機構について明らかにすることであった。しかし、KTa(Zr)O3の光触媒活性の再現性について問題が生じ、その解決に時間を取られてしまった。そのため、表面修飾によって光触媒活性の向上効果を示す有機半導体材料を見出すことはできたものの、今年度中に複合効果を示す組み合わせを見出すまでには至らなかった。よって、現在までの達成度としては「やや遅れている」に該当すると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下のように実施する予定である。 電荷輸送層の導入による光触媒活性の向上効果については、現在効果が明らかになっている[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルや[6,6]-フェニル-C71-酪酸メチルの他に、電荷分離を担う錯体とπ-πスタッキングを形成し、スムーズな電子移動が起こると予想される多環芳香族炭化水素(ペンタセンやコロネン等)を中心に検討す。また、蛍光スペクトル測定や過渡分光測定等により、活性向上効果の発現機構を明らかにする。さらに、従来の研究で明らかにしている金属ポルフィリンによる表面修飾効果についても検討し、中心金属や配位子が電荷分離寿命に与える影響について調査する。 また、水分解反応で高い活性を示した組み合わせをCO2の光還元反応に適用し、水素生成以外の光エネルギー変換反応を検討するほか、同様の系で太陽電池を作製し、疑似太陽光下でI-V特性を評価する。さらに、アクションスペクトルを測定し、光電変換効率の波長依存性から電荷移動機構について調べる。
|
Research Products
(2 results)