2023 Fiscal Year Research-status Report
天然物の活性基本構造を基盤とした新規シグナル伝達経路阻害物質の選択的合成
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23K04946
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
石川 裕一 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (40348826)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 天然有機化合物 / ヘッジホッグシグナル / シグナル伝達 / 構造活性相関 / ケミカルバイオロジー / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの発生などに関与するHhシグナル伝達経路とWntシグナル伝達経路に対して、それぞれ阻害活性を示す天然有機化合物Taepeenin DおよびScopadulciolは、新規抗がん剤リード化合物として期待されている。これらの化合物は、非常に類似した構造をもつものの異なる生物活性を示す。そこで、2つの化合物および各種アナログを合成し、その構造活性相関研究から、それぞれの化合物が活性を示すための最小基本構造(活性基本構造)を明らかにし、その構造をもとに、共通する基本骨格から、それぞれの生物活性をもつ新規化合物を自在に合成する手法の開発を行った。さらに、その活性基本構造から、HhおよびWntシグナル伝達経路の双方に阻害活性をもつハイブリッド型阻害剤の創製の可能性を探ることよって、生物学的な基礎研究に必要な新規分子ツールの開発や、新規抗がん剤リード化合物の創製などの応用研究の基盤の構築を目指した。 Taepeenin Dの合成にあたり、容易に入手可能な原料としてWieland-Miescher ketone(WMK)を採用し、Taepeenin Dに導くための各種官能基化を試みた。その結果、Taepeenin Dの特徴的な4級立体中心および、芳香環部分を有する重要合成中間体を得た。また、各工程について再検討を行い、収率の改善に成功した。 Scopadulciolの合成についても、原料としてWMKを採用し、Taepeenin Dと同様の合成中間体へ導くことによって、合成の効率化を図った。さらに、その特徴的な縮環部分構造の構築を目指し検討を行なった。その結果、主骨格となる3環性骨格の構築に成功したほか、4環性骨格の足掛かりとなる4級立体中心の導入も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までのところ、目的とする天然有機化合物Taepeenin DおよびScopadulciolの合成については達成できていない。これは、原料からの工程数の多さから、十分な化合物が供給できなかったこと、その改善に時間がかかったことが原因である。しかしながら、それぞれの目的化合物について、収率の改善に成功したほか、重要合成中間体の合成に成功しており、今年度の早い段階での合成達成が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的である、天然有機化合物Taepeenin DおよびScopadulciolの合成を早急に達成し、つづく、多様な誘導体合成へと展開することを目指すものとする。 また、それぞれの化合物を合成したのち、さまざまな誘導体の生物活性の評価から得られる構造活性相関に関する情報を得ることで、当初の目的である、それぞれの天然有機化合物の活性発現に必要な最小基本構造の解明を目指すものとする。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、進捗がやや遅れていることから、実験に用いる試薬に対する支出に差異が生じたものである。次年度は、早急に目的となる化合物の合成を行うために、研究期間の早期の段階で、それら実験に関わる支出が必要となると考えられる。
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