2023 Fiscal Year Research-status Report
構造解析に基づくアクチン可視化・操作機能性分子の開発
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23K04959
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 匡 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60462660)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチンは細胞の運動性のみならず,細胞間のコミュニケーションの一つである力の伝播の分子基盤となっており,細胞の集団としての振る舞いを決める一因となる.本研究では生細胞中におけるアクチン繊維の可視化・操作ツールの開発を行う.初年度は,研究代表者が報告したアクチンプローブ HMRef とアクチン繊維の構造解析情報を元に,蛍光増大型のプローブの開発を行った.HMRef は染色時間の短さ,染色の均一性という利点があり,細胞内膜環境で非蛍光性となることから,共焦点顕微鏡下で高いコントラストの繊維像を取得可能であるが,アクチンへの結合の有無にかかわらず常時蛍光性であることから,細胞外の余剰の分子はバックグラウンド蛍光となり,汎用される落射蛍光顕微鏡下では像がなまってしまう.このためまず,アクチン繊維との結合情報を元に HMRef の構造最適化を行い,繊維に結合した時にのみ,高蛍光性となる分子を開発した.具体的には,アクチン分子の側鎖との間に空間的な余裕がある位置に対して官能基を挿入し,申請者が独自に確立してきた分子設計法に則り,周辺環境応答性のある蛍光制御原理を用いることで,非結合時の水溶液中では弱蛍光性となるが,結合時には周辺の疎水環境に応答し高蛍光性となるプローブの開発を行った.これにより,アクチン繊維への結合の解析を,蛍光増大により簡便に定量評価可能となった.本成果は,今後のアクチン繊維結合性の機能性分子開発の基盤としても有用であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた初年度の研究目標であった蛍光増大型のプローブの開発を達成できた.並行して行っているプローブの多色展開に関しては,有機化学合成がボトルネックとなっており,類縁体の報告例が無いことから,構造解析情報に則り,当初,予定していた構造からの展開が必要も視野に入れ,研究を継続している.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,構造解析結果に基づき,プローブの開発を進める.初年度に蛍光増大型のプローブが得られたので,構造をさらに展開することにより,応答性を高める他,多色展開も進めていく,また,得られた化合物の構造や結合の有無の情報をフィードバックすることで,分子設計の精度を高めていくことが,今後の機能性分子の開発にとっても重要となると考えている.
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