2023 Fiscal Year Research-status Report
細菌による機能性食品成分としてのエタノールアミン型プラズマローゲン生産
Project/Area Number |
23K05012
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
小野寺 智子 名寄市立大学, 保健福祉学部, 助教 (10734569)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | プラズマローゲン / 細菌生産 / 発酵乳製品スターター菌 / ビフィズス菌 / Selenomonas ruminantium / 大腸菌 / 嫌気培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は食経験のある細菌を機能性プラズマローゲン(Pls)の供給源として応用・活用するための基礎を確立することを目的に、次に示す方法によりヒトにとって高い機能性を有するエタノールアミン型プラズマローゲン(PEPls)の細菌生産を試みるものである。方法1:プロピオン酸菌等が持つことが示されたプラズマローゲン生産の鍵酵素候補遺伝子を食経験がありホスファチジルエタノールアミン型リン脂質合成能のある細菌に導入する。方法2:食経験のあるグリセロール型プラズマローゲン(PGPls)生産菌にエタノールアミン型のリン脂質頭部を生合成するための関連遺伝子を導入する。方法3:PGPls頭部の酵素的改変の可能性を検討する。 令和5年度においては、次の2点に取り組んだ。1点目は、発酵乳製品スターター菌のPlsの存在に関する検討を行なった。市販のヨーグルトより分離したビフィズス菌(Bifidobacterium breve)をシッフ試薬で染色し、菌体が濃い紫色に染色したことから、本菌がPlsを有することを見出した。2点目は、1点目と並行して、連携している東北大学のグループとともにこれまでに構築したSelenomonas ruminantiumのplsAホモログを組み込んだ大腸菌でのPls生産能を解析した。その結果、Pls含量は嫌気培養24時間で全リン脂質の7割に達するが、好気培養では生産されないことを見出した。また、二次元TLC解析により、PEPlsの産生を確認した。さらにビニルエーテルを形成している脂肪アルデヒドの組成分析の結果、エタノールアミン型でもグリセロール型でもC16:1が主であることを確認した。これらの結果は連名で日本農芸化学会2024年度大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発酵乳製品スターター菌のPlsの存在に関する検討では、plsA発見の論文でホモログの存在が示唆されていたB. breveについて、本菌を用いている市販のヨーグルトより分離した株でPlsの存在を確認した。さらにデータベース上のB. breveゲノムから、1702アミノ酸をコードするホモログ遺伝子を確認した。また、データベース上のPropionibacterium freudenreichiiのゲノムでは1458アミノ酸をコードするホモログ遺伝子を確認した。それぞれの遺伝子について、大腸菌発現ベクターに組み込むためのプライマーを設計した。名寄市立大学での具体的な遺伝子実験については、準備に時間を要しており年度内では進められなかったため、(3)やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロピオン酸菌由来のPls生合成酵素候補遺伝子に加え、新たに確認したB. breveの候補遺伝子も加え、これらを大腸菌に導入し、活性確認を行う。さらに、発酵乳製品スターター菌に高濃度にPlsを生合成するものが見つかった場合は、その菌のPls生合成酵素の候補遺伝子についても解析対象に加えて実験を行う予定である。 また、PlsAによるPls生合成は嫌気条件でしか進行しない。枯草菌での発現系は嫌気培養における枯草菌の菌体収量をいかにあげるかにかかっている。枯草菌は硝酸呼吸が可能であるため、予備実験では2xYT培地をベースに、1%グルコース、0.2%硝酸ナトリウム、0.5%ピルビン酸ナトリウムを加えた培地で嫌気培養を行った。しかし現状では大腸菌の半分程度の菌体収量しか得られていないため、嫌気培養の条件を再検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた名寄市立大学での遺伝子組換え実験が計画通りに進められなかったこと、令和5年度に行った実験に係る試薬や消耗品等が手持ちのもので賄うことができたことが主な理由である。 本年度以降、遺伝子実験の進行に従い、遂行に必要な機器類や試薬・消耗品の購入費用、塩基配列解析の外注費用として使用する計画である。
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