2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K05024
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小池 亨 静岡大学, グローバル共創科学部, 講師 (20377716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道羅 英夫 静岡大学, 理学部, 教授 (10311705)
鳥山 優 静岡大学, 農学部, 教授 (60202206) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 放射線 / 細胞増殖 / 細胞死 / 器官再生 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
マナマコは侵襲的刺激に応じて内臓を自切・放出するが,その後,失われた内臓を短期間のうちに完全に再生する。また水温が上がった際には夏眠をするなど,特有のストレス耐性能も有している。こうしたマナマコの再生能力・ストレス耐性能力について研究を進めている中,我々はマナマコが高い放射線耐性能を持つこと,そして放射線照射後にも器官再生できるという現象を見出した。こうした放射線耐性分子機構や放射線照射後の正確な器官再生機構の解明は,放射線障害への対応や放射線耐性がん治療といった応用にも繋がるものと期待される。そこで本研究は,1) マナマコの放射線耐性,及び放射線照射後の器官再生現象の基礎的なデータを取得し「新規放射線耐性実験モデル」として確立すること,2) マナマコ放射線耐性の分子機構を明らかにすることを目的としている。本研究プロジェクト初年度である令和5年度は以下の研究を遂行した。 1.放射線耐性現象の組織・形態学的解析: 内臓放出させたマナマコに対して,様々な線量にてγ線を照射し,その後の1ヶ月生存率と内臓再生の様子を解剖学的・組織学的に解析した。その結果,100Gy照射ではほぼ全ての個体が生存し,内臓再生も起こること,一方で1000Gyの照射でも多くの個体が生存するものの,内臓再生は大きく遅延することを確認した。しかし,細胞増殖活性を観察したところ,1000Gy照射後でも再生に向けた細胞増殖が起こることが明らかになった。放射線照射後の細胞死の様子を観察したところ予想していたほど多くはなく,現在,それら結果についてさらに詳細な解析を進めている。 2.放射線耐性の分子機構の解析:γ線照射後にDNA損傷修復やアポトーシス抑制に関わる一部の遺伝子の発現をRT-PCRにて解析したところ,発現上昇が観察された。現在,RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析にむけた準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マナマコへの放射線照射量と生存率,内臓の再生への影響といったマナマコの放射線耐性現象についての概要を掴むことができた。また,遺伝子発現の網羅的な解析を行う前段階として,DNA修復やアポトーシス制御に関連する遺伝子の発現変動解析を個別遺伝子に対して行うことで,放射線耐性機構に関する示唆的な結果を得られた。さらに,放射線耐性に関わる細胞内シグナル系・代謝系を探るためのプロテオミクス解析のための予備実験として,タンパク質リン酸化の変動解析を行ったところ,変動する複数のシグナルをウェスタンブロットにて確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
マナマコの放射線耐性現象についての詳細をまとめ,新規放射線耐性実験モデルとして確立する。また,放射線照射後の細胞死の誘導の有無について明確にする。放射線照射後の遺伝子発現については,RNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い,どのような耐性機構が働いているのかを明らかにしていく。放射線耐性に関わる細胞内シグナル系・代謝系のリン酸化プロテオミクス解析に向けてのサンプル調製法の検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初から網羅的遺伝子発現解析を行うのが令和5年度末から令和6年度上旬を予定していたため,そのための予算を令和5年度に含めていたが,受託解析を令和6年度に行うことになったため。
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