2023 Fiscal Year Research-status Report
Molecular Mechanisms of Spine Disruption Developed from Mouse Strain Differences in Antiprion Drug Susceptibility
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23K05036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
照屋 健太 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30372288)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | GMFβ / プリオン病 / 薬剤感受性 / グリア / アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、プリオン感染マウスの生存期間を飛躍的に延長させる物質として中性高分子化合物であるセルロースエーテルやアミロイド結合性低分子化合物であるcpd-Bを見出してきた。興味深いことに、両者は化合物の性質とそれに付随する投与法が相補的であるだけでなく、それらの抗プリオン効果においても、効果的なマウスの系統は相補的であった。すなわち、セルロースエーテルが効果的なマウス系統では、cpd-Bの効果は芳しくなく、逆もまた真であった。薬剤の汎用性の向上とこの現象の理解のため、プロテオミクス的な解析を実施し、CEが効果的の感受性マーカーとしてglia maturation factor β(GMFβ)という蛋白質の多型を見出した。本研究は、GMFβの機能とその多型による違いを解析し、これまでと異なる側面からプリオンによる神経毒性の作用機序を探ることを目的としている。 GMFβはグリア細胞系において、シグナル伝達の一部を担う分子として発見されてきた。一方、アクチンフィラメントのアクセサリーと配列、及び、構造的に相同性がある。そこで、プリオン感染や他の刺激による炎症性応答におけるGMFβの位置づけを明確にし、その上で、シグナル伝達やアクチン重合における多型の影響を評価する。以上により、抗プリオン薬剤の感受性の向上、さらにはアクチンやプリオン蛋白質の自己組織化と神経細胞死の関連について知見を得たい。 本年度は、上記のような相補性から、セルロースエーテルとcpd-Bを併用した場合の抗プリオン効果について、セルロースエーテル感受、cpd-B低感受性のマウス(Tg7)とセルロースエーテル低感受、cpd-B感受性のマウス(Tga20)とを用いて抗プリオン効果の検証を行った。また、セルロースエーテルの疎水性の向上や、cpd-Bの構造最適化が、これらの感受性マウスに対して与える影響を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞レベルでの検証に移行する前準備として、マウスの系統依存性に用いることのできる化合物のバリエーションを拡大し、「研究の推進方策」に示すように、よりGMFβの多型が細胞へ及ぼす影響について系統依存性を明確に調査するための基盤が得られた。 「概要」に示した通り、中性高分子化合物とアミロイド結合性低分子化合物は化合物の性質だけではなく、抗プリオン効果においても、相補的であった。これまでにセルロースエーテルの多くのバリエーションのうち、その疎水性がプリオン感染細胞での効果と関連していたことから、脂肪鎖で修飾したセルロースエーテルの試験を実施し、非修飾のものよりもプリオン感染細胞での抗プリオン効果が顕著であることを見出した。これは細胞での試験の際により少ない使用量で実験を実施することが可能であること、副次的な効果を抑えることが期待できる。しかしながら脂質修飾がこれまでに観察されたセルロースエーテル低感受、cpd-B感受性のマウス(Tga20)のセルロースエーテルに対する感受性を顕著に向上させるには至らなかった。その抗プリオン効果は低かったものの、疎水性との関連性は見られ、Tga20において疎水性との関連は確認できた。また、セルロースエーテルはフィルムへと簡単に加工することができる性質を活かして、低分子化合物との併用試験を行った。その結果として、Tga20での相乗効果が大きかった。これらは、抗プリオン薬剤のいわば、アップグレードを行ったものである。これらの実験を通じて、細胞への投与に用いることのできる化合物の特徴をつかんだ、プリオン感染細胞での試験に応用可能な知見であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの結果に基づき、現在骨髄系の細胞の関与と、抹消投与時に賦形剤の蓄積の多い脾臓やリンパ系組織の関与について調査を行っているところである。その傍らで、履歴が明確なC6グリオーマ細胞や、ミクログリアの培養株を用いた実験を計画している。具体的には、最初にこれらの細胞のGMFβの遺伝子多型を調べ、中性高分子化合物とアミロイド結合性低分子化合物のどちらに感受性があるタイプであるか調査を行う。これらの細胞に対する幾つかの刺激において、GMFβは複数のリン酸化シグナル伝達に関わっているとみられているので、GMFβを含め上流や下流の因子のリン酸化についてウエスタンブロットで調査を行う。例えば、カドミウムイオンの添加は(上流の)p38MAPKのリン酸化が劇的に更新することを見出している。stat系やsmad系のシグナル伝達系に着目して解析を進める。もし、GMFβが深く関与している場合には、リン酸化抗体の作成などを計画する。また、セルロースエーテル感受性マウスでは、TGFbやLPS刺激に対する炎症応答が抑制されている所見が得られていること、セルロースエーテルは、腹腔や皮下といった末梢組織からの投与で十分な効果が得られることから、可能であれば、腹腔マクロファージでの試験も実施したいと考えている。 それらの一方で、GMFβはアクチンのアクセサリー蛋白と構造的な相同性を持っているため、スパイン崩壊への関与が示唆される。系は若干異なるものの、アミロイド結合性低分子化合物の試験で実施したアミロイド形成阻害試験の系を利用しつつ、アクチンの重合試験系を立ち上げたい。GMFβの関与、並びにその多型の影響をこのような試験系において評価を試みる。
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Causes of Carryover |
予定していた研究発表論文のオープンアクセス費用(APC)が、所属機関と当該出版社の契約転換に伴う減額等の措置のため。
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