2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of increased piezosensitivity in budding yeast due to deficiency in mitochondrial functions
Project/Area Number |
23K05101
|
Research Institution | Niigata University of Pharmacy and Medical and Life Sciences |
Principal Investigator |
重松 亨 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (10315286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 晃徳 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 准教授 (60599786)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 高圧力 / 静水圧 / 殺菌 / 出芽酵母 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母の静水圧下における死滅(不活性化)とオルガネラの機能の相関関係を明らかにするために、2023年度は、当初計画に従って以下の2項目について研究を実施した。その結果、それぞれの項目について以下に記載する成果を得ることができた。 検討項目1:ゲノム編集によるミトコンドリア遺伝子への変異の導入 ミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼの機能に必要な遺伝子の内、核のゲノムDNAにコードされているCOX6およびCOX8遺伝子を標的としてフレームシフト変異を導入する実験を実施した。両遺伝子の配列情報から、CRISPR/Cas9法のガイドRNA (gRNA)を選定し、オリゴDNAを設計し合成した。バックボーンベクタープラスミドにそれぞれ合成したオリゴDNAを連結し、CRISPR/Cas9用のプラスミドを4種類(COX6_NGG2/ BYP9747, COX6_NNGRRT1/ BYP9748, COX8_NGG1/ BYP9747, COX8_NGG2/ BYP9747)作製することができた。 検討項目2:GFP標識酵母株を用いた高圧処理による細胞損傷の解析 細胞膜、核膜、核内、小胞体、ゴルジ体、プロテアソームにそれぞれ局在するタンパク質をコードする遺伝子にGFPタグを付与した標識酵母株を用いて、オルガネラの損傷と細胞の不活性化の相関関係を解析した。その結果、核、細胞膜の損傷は不活性化との相関性が認められなかった。ゴルジ体、小胞体は核に比べて圧力により損傷しにくいことが判明した。減速期細胞、定常期細胞いずれの場合も、小胞体の損傷が細胞の不活性化と相関しなかった。一方、ゴルジ体については、減速期細胞においてはゴルジ体の損傷の有無に関わらず死滅が生じたが、定常期細胞では、ゴルジ体の損傷と細胞の不活性化が強く相関する可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討項目1「ゲノム編集によるミトコンドリア遺伝子への変異の導入」においては、先行研究の調査の結果、CRISPR/Cas9法による、出芽酵母のミトコンドリアDNA上の遺伝子への変異導入は困難と考えた。しかしながら、ミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼをの活性に必要な遺伝子の内、核のゲノムDNAにコードされている遺伝子が多く存在しているので、核のゲノムDNAにコードされているCOX6およびCOX8遺伝子の変異導入用の手法確立を目指し、変異導入用のプラスミド4種類の構築に成功した。 検討項目2「GFP標識酵母株を用いた高圧処理による細胞損傷の解析」についても、保有するGFPタグを付与した標識酵母株すべてを用いて、圧力処理によるオルガネラ(または細胞膜)の損傷度合いを視覚化し、細胞の不活性化との関連性を解析することができた。特に、定常期細胞におけるゴルジ体の損傷度合いと細胞の不活性化が関連する可能性を示す結果を得ることができた。 以上のことから、本研究は、概ね順調に進展していると自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度に得られた研究成果を基に、引き続き、今後は以下のように研究を推進する予定である。 検討項目1:ゲノム編集によるミトコンドリア遺伝子への変異の導入 2023年度に構築したプラスミドを用いて、出芽酵母のCOX6、COX8遺伝子のフレームシフト変異株を作出する。本研究では、親株および変異株を電子伝達系の阻害物質共存下での培養および高グルコース濃度でも培養し、細胞のエネルギー状態をATP濃度の測定により評価する。さらに高圧処理時にアミノ酸などの物質を添加する実験を行う。これによりCOX6およびCOX8遺伝子の変異がどのように圧力感受性の増大および圧力不活性化に影響するのかを明らかにする。同時に、CRISPR/Cas9法によるミトコンドリアDNA上のCOX1遺伝子への変異導入手法についても検討し確立していく。 検討項目2:GFP標識酵母株を用いた高圧処理による細胞損傷の解析 各GFP標識酵母株にCOX6もしくはCOX8遺伝子の変異を導入した変異株を作出する。それらに圧力処理を行い、細胞状態を蛍光顕微鏡で観察する。同時に生菌数の測定も行い、圧力死滅(不活性化)挙動を解析する。結果に基づき、①シトクロムcオキシダーゼの機能不全、②培養条件、③高圧処理後の細胞の損傷状態、そして④圧力不活性化挙動、の相関関係を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
出芽酵母の遺伝子変異導入を目的とした、CRISPR/Cas9用のプラスミドを構築することができたが、プラスミドを出芽酵母に導入して変異株を取得する実験の準備に若干の遅れが生じた。そのため、2024年度にこの実験を実施するために、次年度使用額とした。 2024年度は、早急に変異株を取得する実験に着手し、当初計画での2024年度の検討内容を含めて、計画通りに研究を実施していく予定である。
|
Research Products
(1 results)