2023 Fiscal Year Research-status Report
腸管のアラキドン酸とその代謝物が担う食欲調節に関する研究
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23K05122
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Research Institution | Southen Tohoku Research Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
五十嵐 美樹 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, 研究員 (70340172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 圭介 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (10435860)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アラキドン酸 / 腸管 / 食欲調節 / エンドカンナビノイド / 加齢 / ヒト由来腸管上皮細胞株 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、健常な食欲を保つための腸管の環境について明らかにするために、特に腸管のアラキドン酸とその代謝物であるエンドカンナビノイドの重要性について解明することを目標としている。以下に2023年度に得られた結果について述べる。 1.これまでの研究では、腸管の脂質代謝研究を行う際にヒト腸管のモデルとしてヒト結腸癌由来細胞Caco-2を使用してきた。それに代わるモデルとして、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を小腸吸収上皮細胞へ分化させたモデルを作成してアラキドン酸代謝について検討することとした。分化に関与する転写因子をDOX誘導できるiPSC株を作成して、培養条件を検討して小腸吸収上皮細胞のマーカーを発現する株を作成できた。分化用の培地にはFBSや脂質の添加をしていないため、脂質の蓄積は非常に少なく対象とする代謝物の検出が難しかった。 2.加齢期における腸管のアラキドン酸代謝について評価することを目的として、20週齢と80週齢のマウスの腸管におけるアラキドン酸やエンドカンナビノイドの代謝に関する遺伝子発現レベルを比較した。その結果、CB1やFAAH等のエンドカンナビノイド関連遺伝子の発現レベルが低下していることと、その他にも糖質や脂質代謝に関連するいくつかの遺伝子の発現が低下していることを確認した。20週齢と80週齢において体重当たりの摂餌量に差がなく、二瓶選択試験においてEnsure(液体経腸栄養剤)を与えた場合にも摂取量に差がないことを確認した。 3.実験用動物飼料(リノール酸欠乏食)を作成して脂肪酸組成を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、細胞実験と動物実験を平行して進めた。細胞実験では、iPSCから吸収上皮細胞の作成を試みてモデルとして使用可能であることを確認できた。動物実験に関しては、実験動物入手と特別飼料の作成のタイミングの関係から加齢動物実験を先に進めており、腸管の代謝関連遺伝子の発現解析と予定している行動試験の方法については確認が済んでいる。以上のとおり、おおむね計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に引き続き細胞実験と動物実験を平行して進める。作成した細胞モデルで脂質代謝を確認できるように培養条件を決める。動物実験は加齢動物の二瓶選択試験を先行して行い、採取したサンプルの分析と解析を進めていく。作成した動物飼料での摂食実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
加齢動物実験のサンプル数を減らしたことと、摂食実験を次年度に持ち越ししたため。また、ヒト吸収上皮細胞の作成を検討する実験で比較的安価に進めるための方法を確立できたため。
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