2023 Fiscal Year Research-status Report
イネ感染特異的タンパク質PR1bのアポプラストにおける挙動並びに防御機能の解明
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23K05160
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
犬飼 剛 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90223239)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イネ / いもち病菌 / 抵抗性 / PR1 / PR5 |
Outline of Annual Research Achievements |
コシヒカリに見出されたいもち病高度罹病性QTLの責任遺伝子が機能喪失したPR1bであることを確かめるため、トウモロコシのユビキチンプロモーターに日本晴由来の野生型PR1bをつないだコンストラクトを作成し、これをpBract発現ベクターに組み込んでアグロバクテリウム法によりコシヒカリに導入した。形質転換体の世代を進め、本年度T2固定系統が得られたことから、これらを用いて噴霧接種法によるいもち病抵抗性の検定を行った。その結果、T2固定系統において抵抗性病斑の割合の増加など、量的な抵抗性の増大が認められた。この結果から、コシヒカリがもついもち病高度罹病性QTLの責任遺伝子は機能喪失したPR1bである可能性が高いと考えられた。また、抵抗性病斑の割合が増加する傾向が認められたことから、PR1bはいもち病菌の増殖を阻害するか、あるいは植物自身の抵抗性を増大させる機能があることが示唆された。一方、日本晴のPR1bに関するコシヒカリの準同質遺伝子系統と比較した場合、抵抗性の程度に大きな違いは認められず、過剰発現により効果が高まることはないと考えられた。 PR1タンパクのC末端11アミノ酸は、プロテアーゼによって切り出されCAPEと呼ばれるペプチドシグナルとして防御反応の誘導に働くことが知られているが、イネのPR1bにもCAPEと相同な配列が存在する。イネPR1b由来のCAPEの機能を調べるため、人工合成したCAPEをイネ葉に施与していもち病菌に対する抵抗性が誘導されるか接種試験を行って調べたところ、処理葉において明瞭な抵抗性の増大は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね計画通りに進捗しており、研究を進める上で障害となる問題は生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
CAPEペプチドが細胞のどこで切断されるのか、CAPEの受容体はどのようなものでどこに存在するのかそれらの機構はまだ明らかになっておらず、CAPEの防御反応誘導能を調べるのにCAPEの植物体への噴霧処理が妥当であったか問題が残る。そのため、まずは病原菌を感染させていない健全なPR1b過剰発現体において防御反応が誘導されているのか、改めて防御関連遺伝子の発現を解析し、PR1bの防御反応誘導能の有無を調べる。 PR1b自体に抗菌活性があることが報告されているが、いもち病菌に効果があるのか明らかではない。PR1b過剰発現体からアポプラスト溶液をシリンジ法もしくは遠心法によって抽出し、いもち病菌培養プレートに滴下して、いもち病菌に対する抗菌活性を調べる。PR1b過剰発現体から抽出したアポプラスト溶液に特異的な抗菌性が認められた場合、大腸菌発現システムを用いてPR1bを合成し、抽出・精製したPR1bに関する抗菌アッセイを行う。
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