2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of low grain-filling mechanism and evaluation of its usefulness toward the development of new rice cultivar for whole crop silage
Project/Area Number |
23K05182
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 低登熟化 / 稲発酵粗飼料 / 実肥 / QTL集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の計画に基づき、低登熟性遺伝子座LPW4を有する同質遺伝子系統(NIL-LPW4)について、穂の登熟性及び稲発酵粗飼料の関連形質を解析した。穂あたりの一次枝梗数及び二次枝梗数においてコシヒカリとNIL-LPW4の間で有意な差は確認されなかったが、各一次枝梗に着生する空籾数ではNIL-LPW4が2.1-10.6倍多かった。1株あたりの穂数は同等であったが、1穂粒数が13%増加し、登熟歩合と粒重がそれぞれ29%、4%低下し、最終的に穂あたりの収量が33%、株あたりの収量が22%低下した。次に、LPW4が茎内非構造性炭水化物(NSC)蓄積に与える影響を解析した結果、完熟期にスターチを主としてNSC蓄積量が約1.5倍となった。LPW4の低登熟に対する実肥による登熟回復性評価を行った結果、実肥はNIL-LPW4の登熟歩合及び粒重をそれぞれ19%、5%程度回復させ、穂あたりの収量及び株あたりの収量がそれぞれ37%、22%増加し、慣行栽培のコシヒカリと同等の収量を得ることができた。一方でコシヒカリとNIL-LPW4は両者とも実肥による茎内NSC蓄積の変化は確認されなかった。以上のことから、LPW4は穂の構造を変えることなく空籾の着生数を増加させ、登熟歩合及び穂重を低下させていた。さらにこの低登熟性によりNSCの穂への転流が抑制され、茎内NSC蓄積が増加することが示された。また、このLPW4の低登熟効果は実肥によって抑えることができることが確認された。LPW4と茎内NSC蓄積性QTLであるprl5及びPRL4の集積系統育成のために交配したF1系統について遺伝子型解析による集積の確認とホモ個体選抜のための採種を行った。集積系統はそれぞれ対象となるQTL領域を含む領域に親品種由来の染色体断片が含まれていることをDNAマーカにより確認し、選抜用の種子をそれぞれ1000粒程採種した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はLPW4による低登熟の特徴を解析し、これによる茎内NSC蓄積への影響を明らかにした。加えて、LPW4とprl5及びPRL4の集積系統育成のためにそれぞれのNILを交配し、F1系統の種子を採種した。その結果として、LPW4は穂構造位おける枝梗数には影響しないが、穂先から基部まで空籾を着生させ、登熟歩合を6割程度に抑えており、この低登熟性が茎内NSC蓄積の増加に寄与していることが示された。さらに、LPW4による低登熟性に対する実肥の効果を確認したところ、登熟性が回復し、採種効率の向上が確認された。本年度の結果からLPW4による低登熟性の付与は発酵粗飼料用イネに適した機能になり得ることが示唆された。研究成果の公開として学会発表を実施できなかったが、研究内容自体は当初の計画通り進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本年度実施したLPW4 による低登熟化メカニズムの解明(穂の構造及び収量特性)、LPW4 による低登熟性が茎内NSC蓄積に与える影響、LPW4 の低登熟に対する実肥による登熟回復性の評価について再度解析し、本年度の結果について確認を行う。加えて、育成したF2集団からLPW4とprl5及びPRL4とのホモ化した集積系統の選抜についてDNAマーカーを用いて実施し、選抜した系統の低登熟性及び茎内NSC蓄積性を解析し、実肥による登熟回復性の評価を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の請求額を予定通り使用したが、未使用額が本年度所要額の0.3%程生じた。未使用額は少額であることから研究費の有効利用を考え、次年度に繰り越すことにした。 次年度の研究費では集積系統の倒伏抵抗性評価のための物理特性解析用ソフトウェア購入に一部予算を使用する。また集積系統の選抜のための遺伝子型解析のために、薬品とプラスチック系器具等の消耗品に研究費を使用する。その他は本年度と同様に茎内NSC(デンプン、ショ糖、単糖類)蓄積特性の解析のために薬品とプラスチック系器具等の消耗品に研究費を使用する。また研究成果公開のための学会発表及び論文発表にも研究費を使用する。
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