2023 Fiscal Year Research-status Report
ダイズリン吸収モデルを利用したリン吸収能力の評価と施肥リンの利用率向上技術
Project/Area Number |
23K05190
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
垣内 仁 東京農業大学, 農学部, 准教授 (80503333)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | ダイズ / リン / 子実生産 / 追肥 / 品種 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンはダイズの生育に重要な養分の一つであるが,その吸収能力には品種間差があると考えられる.筆者らのこれまでの研究で,ダイズのリン吸収量はリン施用に伴って直線的に増加する相とリン吸収量の最大値を示す相で評価できることを示した.すなわち,低リン条件下におけるリン吸収能力と最大リン吸収量の両方あるいはいずれかが優れる品種や栽培技術の開発はリン資源の有効活用や火山灰土壌の多い我が国におけるダイズの生産性向上に有用であると考えられる. そこで本研究では,低リン条件下および高リン条件下それぞれにおいてリン吸収量の多い品種を日本のダイズコアコレクションおよび国内で普及している主要品種から探索を行った.その結果,両条件下におけるリン吸収能力や子実生産量には大きな品種間差がみられた.また,リン吸収量が多い品種が必ずしも子実生産量が多いとは限らず,吸収したリンの子実生産効率についても評価する必要があると考えられた.主要品種の中ではフクユタカが最も優れたが,それ以上のリン吸収能力を示す品種もみられた.今後はこれらのうち品種数について,より詳細にリン吸収能力やそれに関わる特性,子実生産効率について評価を行う. 栽培技術の面からはリンの追肥について圃場実験を行った.しかし,圃場の土壌リン含有量がダイズの生育を抑制するほどは少なくなかったことから,無施用区を含めても子実生産量に有意な差は見られなかった.しかし,リン追肥に対する反応には品種間差がある可能性が示唆された.また,施肥体系に関わりなく,総リン施用量が多いほどダイズのリン吸収量も多い傾向があり,リン固定能の高い土壌ではリン追肥が有用である可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイズコアコレクションを用いたリン吸収能力が高い可能性のある品種の探索について,ポット実験により既に普及している品種を含めて数品種選定することができ,予定通りの成果を得られた.また,栽培技術面からのアプローチとして追肥について圃場実験で検討した.その結果,リン吸収量に有意な処理間差が認められず,追肥の効果については明らかにできなかった.しかし,リン追肥に対する反応には品種間差がある可能性が示唆された.また,施肥体系に関わりなく,総リン施用量が多いほどダイズのリン吸収量も多い傾向があり,リン固定能の高い土壌ではリン追肥が有用である可能性も考えられた.初年度は圃場実験のみであり,処理間差が小さい可能性は想定していたため,次年度からはリン固定能が高くかつリン含有量の少ない土壌を用いたポット実験も並行する計画である.今後,これらの実験を通してリンの施肥体系の効果についても明らかにしていく.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は多くの品種,系統からリン吸収能が高い可能性のある品種の探索を行ったのみにとどまっているため,今後はこれらの品種についてより詳細にリン吸収能力やそれに関わる特性,子実生産効率について評価を行う.また,リンの追肥効果については圃場実験を継続するとともに,リン固定能の高い土壌を用いたポット実験を行い,リンの施用方法がダイズのリンの吸収パターンと最大リン吸収量に及ぼす影響およびその品種間差について明らかにする.
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Causes of Carryover |
当初から購入を予定していた実験機器の価格が想定よりも値上がりしたため前倒し請求を行ったが,その際10万円単位での申請だったため20万円を申請し差額が生じて次年度使用額が計上された.次年度使用額は前倒し請求で減額した次年度分を補填する形で,栽培実験にかかる資材や試薬の購入に充てる.
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