2023 Fiscal Year Research-status Report
キヌアの花成と温度感受性を制御する遺伝子の探索と機能解明
Project/Area Number |
23K05192
|
Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
小賀田 拓也 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (00724501)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 花成 / キヌア / 環境応答 / 高温 |
Outline of Annual Research Achievements |
キヌアの栽培地域拡大とレジリエンス強化に向け、環境要因に対する花成制御の系統間差や、原因遺伝子等について明らかにしていくことは重要である。本研究では、多様な地理的分布からなるキヌア系統群を用いた比較解析と、遺伝子機能解析系を活用し、キヌアの温度等に対する環境応答や、花成や収量に影響を及ぼす開花制御機構と原因遺伝子等の解明を目指す。 本年度は、はじめに参照ゲノム配列が整備されている低地型標準系統のキヌアを用い、人工気象器を用いて栽培試験を実施した。この結果、高温条件下で栽培をした場合の、栄養成長の速度や花成のタイミング、収量といった表現型の変化と影響を明らかにした。これにより、遺伝子発現解析を実施するのに適した栽培条件と、サンプリングポイントを検討した。 また、モデル植物等で花成に重要な役割を持つとされる開花誘導遺伝子の相同配列をキヌアゲノムから検索し、cDNA配列を単離してクローニングした。これらのキヌア相同遺伝子を一過的遺伝子発現制御法を用いて機能解析に供した結果、キヌアの花成に影響を及ぼす複数の候補遺伝子を同定した。次に、通常温度条件および高温条件下で栽培した低地型標準系統キヌアを用いて経時的なサンプリングを行い、RNAサンプルを調製した。これらのサンプルを用いて、開花制御に関わる候補遺伝子の発現パターンを調べた結果、花芽形成期から開花期にかけて高発現が誘導されていることを確認した。 今後、得られたRNAサンプルをRNAseq解析に供し、異なる温度条件下で生育した場合の、栄養成長から生殖成長に至る各ステージのトランスクリプトームデータを取得し、キヌアの花成制御に関わる遺伝子や、栽培温度条件による表現型の変化をもたらす原因遺伝子の同定を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は低地型標準系統キヌアを用いて、異なる温度条件下における表現型の変化、生育への影響を明らかにするとともに、花成制御に関わる候補遺伝子を同定し、それらの発現パターンを明らかにすることが出来た。また、生育ステージごとのRNAサンプルを調製済みで、RNAseq解析に進むことが出来る段階にある。サンプリングの条件を決定し、マーカー遺伝子として用いることが出来る花成制御遺伝子を同定出来たことは、トランスクリプトーム解析を進めるうえで重要なステップと考えられ、今後の研究を進める上で順調な進捗状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度中に得られたキヌアのRNAサンプルを用いてRNAseq解析を実施し、トランスクリプトームデータを取得し、比較発現解析を進める。これにより、生育ステージごとの高温応答および花成制御因子等の遺伝子発現パターンを明らかにする。また、地理的分布の異なる複数の栽培型キヌア自殖系統を用いて栽培試験を行い、温度環境変化に対する表現型の差異を明らかにする。また、温度感受性の異なる複数のキヌア系統を用いて花成制御遺伝子候補の遺伝子発現パターンを系統間で比較する。
|
Causes of Carryover |
本年度はキヌアより調製したRNAサンプルを用いてRNAseq解析を実施する予定であったが、キヌアを栽培する温度条件とサンプリングポイントを検討した結果、細かく時系列データを取得することが適していると判断し、その結果、当初の予定よりもライブラリー数が多くなる見込みとなった。そこで、本年度予定していたRNAseqの受託解析費用のうち一部を繰り越し、次年度予算と合算してRNAseq解析を実施する。
|