2023 Fiscal Year Research-status Report
樹上のブドウ果実香気の生合成―エチルエステル類の生合成機構について―
Project/Area Number |
23K05205
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅谷 純子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90302372)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 果実香気 / ブドウ / 果樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主要な生食用ブドウであり、成熟期に果実にエチルエステル類を含む「巨峰」、「竜宝」と、ほとんど含まない「シャインマスカット」の樹を用いて、品種による香気成分、特にエチルエステル類の含有量の比較を成熟段階ごとに比較した。上記品種の成木を施設内で栽培管理し、それらのベレーゾン前、ベレーゾン後、収穫適期に分けてサンプリングし、香気成分を分析した。その結果、「巨峰」と「竜宝」では、エチルエステル含量が高く、「シャインマスカット」では、低いことが示された。また、栽培管理は同様の条件であったが、「竜宝」の方が、エチルエステル含量が「巨峰」よりも明らかに高く、成熟期におけるエチルエステル生合成が「竜宝」で盛んに行われていることが示唆された。 加えて、ポット植えの「巨峰」樹を用いて、環境要因である光が、香気成分量に及ぼす影響についてエチルエステルを含めて調査した。成熟段階ごとに果粒を採取し、果皮と果肉に含まれる香気成分を分析したところ、ベレーゾン期より光の量を減らした樹体では、多くのエチルエステルが少なくなることが明らかとなった。一方、フェニルプロパノイド系のエチルエステルである香気成分含量については、遮光処理を行ったブドウ果実の方が、含量が多くなることが明らかとなった。 加えて、成熟に伴い特異的に発現が変化する香気成分関連遺伝子を明らかにするため、全RNAを抽出し、それを用いてRNA-seqの分析に供した。 今後、上記の品種や環境要因による香気成分量の違いがどのような制御によるものなのか調査する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の中にある香気成分量の比較については結果を得ることができた。一方、香気成分量の制御に関するRNA-seqについては、現在解析を進めている段階であるため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
エチルエステル類を含む香気成分の変化に及ぼす環境要因と植物ホルモンの影響を明らかにするため、特異的に変化する遺伝子と代謝物について解析する。そのために、RNA-seq解析と、メタボルーム解析を進める。 具体的には、「巨峰」、「竜宝」、および「シャインマスカット」の成熟に伴う遺伝子発現と代謝物の変化について果実を成熟段階で比較する。遺伝子発現量に変化が認められるエチルエステル含量に関わる遺伝子を見出し、その制御メカニズムについて、環境要因や植物ホルモンとの関係とともに解析する。
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Causes of Carryover |
2023年度に実施した材料の遺伝子解析(RNA-seq)の委託時期が3月となってしまい予定より遅れたため、その費用の請求が次年度(2024年度)となったこと、および予定していた遺伝子解析に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。 2024年度は、RNA-seqの結果に基づき、解析を行うこと、また、その結果に基づいた遺伝子解析を進めるために、遺伝子抽出や発現解析などの分子生物学関連の試薬と、分析に関わる人件費に充てる予定です。
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