2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of controlling the degree of tepal expansion at the full-bloom stage in Tricyrtis
Project/Area Number |
23K05206
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中野 優 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00262460)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 花被の展開 / ホトトギス属植物 / ユリ科花き園芸植物 / BクラスMADS-box遺伝子 / 組織学的観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,主に以下の3点について検討を行った.①花被の展開に関する組織学的観察:満開時の花被の展開程度の異なる数種のホトトギス属植物において,満開時の花被の向軸側および背軸側の表皮細胞を実体顕微鏡で観察した.その結果,花被が反り返るまたは平開する種では,花被が曲がる部分において向軸側表皮細胞が大きく肥大し,向軸側表皮細胞と背軸側表皮細胞の大きさに著しい違いがみられた.花被が中程度に展開する種では,花被全体を通して,向軸側表皮細胞が背軸側表皮細胞よりもやや大きい傾向がみられた.花被がほとんど展開しない種においては,花被全体を通して,向軸側表皮細胞と背軸側表皮細胞の大きさにほとんど違いがみられなかった.現在,花被の展開をより詳細に観察するため,花被の組織切片を作製中である.②BクラスMADS-box遺伝子が過剰発現/抑制された形質転換体の作出:ホトトギス‘東雲’における2種類のBクラス遺伝子 (DEFICIENS,GLOBOSA) をもとに,それらを単独および合わせて過剰発現するコンストラクト,および それらを単独および合わせて抑制するコンストラクトを作製した.これらのコンストラクトの機能は,シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) の形質転換により確認した.また,花被が中程度に展開するホトトギス種において,これらのコンストラクトが導入された形質転換体を作出中である.さらに,他のホトトギス属植物において,形質転換に用いるエンブリオジェニックカルスを誘導中である.③BクラスMADS-box遺伝子の単離および発現解析:ホトトギス‘東雲’におけるDEFICIENSおよびGLOBOSAの塩基配列をもとにプライマーを作製し,そのプライマーが広範囲のホトトギス属植物におけるBクラス遺伝子の発現解析に適用できることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2023年度に予定していた検討項目のうち,①花被の展開に関する組織学的観察 および ②BクラスMADS-box遺伝子が過剰発現/抑制された形質転換体の作出 については,ほぼ予定通りに進んでいる.③BクラスMADS-box遺伝子の単離および発現解析 に関しては,当初は様々なホトトギス属植物においてBクラスMADS-box遺伝子を単離する予定であった.しかし,ホトトギス‘東雲’のBクラスMADS-box遺伝子をもとに作製したプライマーを用いることにより,他のホトトギス属植物においてもBクラスMADS-box遺伝子の発現解析が可能であることが明らかになった.一方,2023年度の問題点としては,夏季の高温によりホトトギス属植物個体がダメージを受け,良好な材料が十分には得られなかった点があげられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度に行った検討項目の継続として,①花被の展開に関する組織学的観察,②BクラスMADS-box遺伝子が過剰発現/抑制された形質転換体の作出,③BクラスMADS-box遺伝子の単離および発現解析を行う.また,これらに加えて,石川県立大学の高木宏樹博士の協力を得て,④RNA-seq法による花被展開関連遺伝子のスクリーニングを開始する. 2023年度の問題を踏まえて,材料に用いるホトトギス属植物個体の栽培には,十分に注意を払う.
|
Causes of Carryover |
当初は,材料の組織培養や形質転換の際に用いるインキュベーターを購入する予定であった.しかし,退官する教員の研究室より,ほぼ同じ機能のインキュベーターが譲渡されたため,その分の設備備品費を用いずに済んだ.それについては,2024年度以降に,分子生物学的実験のための物品費の追加として使用する予定である.
|