2023 Fiscal Year Research-status Report
マンゴー果実の耐病性の理解に向けた香り放出制御メカニズムの解明
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23K05209
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
岡田 貴裕 佐賀大学, 医学部, 助教 (30584809)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マンゴー / 果実 / エリシター / 香気成分 / グリコシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
アーウィン種マンゴーにおいて香気配糖体の糖脱離プロセスを担うグルコシダーゼ遺伝子の推定、およびそのcDNAのクローニングを実施した。研究代表者が保有するトランスクリプトームデータをもとに、登熟下の果実において少なくとも28種類のグルコシダーゼ候補遺伝子が発現していることを推定し、その中から12種類のcDNAをクローニングした。さらに、これらにコードされるタンパク質の機能検討に向け、大腸菌を宿主とする組換え体の発現系を構築した(次年度に実施予定である)。 また、生物的ストレスに対する応答と香気成分の放出機序との関連を検討した。具体的には、ペンタ-N-アセチルキトペンタオース(真菌由来エリシター)またはジャスモン酸を展着剤と共に登熟初期の果実に散布し、これによる香気成分の放出効率およびその組成に対する影響を固相マイクロ抽出-GC/MS分析法で比較検討した。その結果、他の植物種と同様にジャスモン酸がモノテルペンの放出を促進したのに対し、ペンタ-N-アセチルキトペンタオース散布群では顕著な変化は観察されなかった。また当初の予想とは異なり、モノテルペンアルコールに由来する香気配糖体の糖脱離プロセス(遊離型への変換)がエリシター誘導性のシグナルに依存しないことも推定された。これらの事象の分子基盤をRNA-seq解析で検証することとし、対照群およびエリシター処理群の果皮組織よりRNA検体を調製した(次年度にデータを取得予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、グリコシダーゼの機能解析に必要な発現系の構築を完了している。また、生物的ストレス応答時における香気成分の放出変動に関する基礎知見を蓄積している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、組換え体を用いた酵素アッセイを実施し、マンゴー果実において香気配糖体の糖脱離プロセスを担うグルコシダーゼを同定したい。また、エリシター処理がグルコシダーゼ候補遺伝子群やテルペノイド合成遺伝子群の発現にもたらす影響を比較検討し、ジャスモン酸処理時に見られたモノテルペン放出促進の分子基盤を総合的に考察する。
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Causes of Carryover |
エフォートを調整する必要が生じ、当初予定していたRNA-seqデータの取得時期を次年度に変更したため。
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