2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on resistance and integrated pest management against clubroot disease in Brassicaceae crops
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23K05211
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
久保 中央 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60347440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 元人 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (50381934)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 根こぶ病 / アブラナ科作物 / 防除 / 海藻資材 |
Outline of Annual Research Achievements |
根こぶ病抵抗性遺伝子座の遺伝解析については、花菜品種「花飾り」と「CR京晴」を交配したF2集団86個体を材料に用いて行った。今年度は、作製途中の連鎖地図にDNAマーカーを追加して連鎖地図の充実とBrassica rapa既知染色体との対応付けを行い、抵抗性遺伝子座の探索を進めた。その結果、B. rapa既知染色体10本中のうち8本と対応付け、それらの染色体上における遺伝子座の位置の確認が可能となった。QTL解析によって遺伝子座の探索を行ったところ、4箇所の抵抗性遺伝子座を検出した。それらは、A8染色体上に既知遺伝子座と新規遺伝子座が各1箇所、染色体未対応の2連鎖群に新規遺伝子座が各1箇所であった。また、追試を目的に、同様の両親品種から作成した別のF2集団約110個体を用いて、根こぶ病接種検定と既知抵抗性遺伝子座のマーカーを用いた予備解析を行い、材料として問題ないと考えられた。 根こぶ病抑制効果を示す海藻資材の作用機序の解析については、圃場での発病軽減効果が確認されている褐藻粉末資材を材料に用いた。人工培養が可能で比較的扱いが容易な卵菌類を用いた実験系により、その抗菌作用を評価したところ、遊走子の遊泳やシスト発芽を特異的に阻害することが明らかになった。また、その活性成分の化学的特性を調べたところ、親水性が高く熱に安定な物質であることがわかった。 根こぶ病菌の生体可視化については、アグロバクテリウム法を利用した形質転換系の確立を目的とし、今年度は形質転換ベクターの最適化を行った。本菌と近縁の卵菌類で実績のある形質転換ベクターを改変し、根こぶ病菌遺伝子プロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質遺伝子を発現させるベクターを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根こぶ病抵抗性遺伝子座について、既知の抵抗性遺伝子座と連鎖するが遺伝的効果が既報とは異なる遺伝子座を同定した。加えて、新規の抵抗性遺伝子座を同定したため。 根こぶ病抑制効果を示す海藻資材の作用機序の解析については、既存のデータより植物に対する抵抗性誘導の関与を想定していたが、今回、新たに卵菌類に対しては抗菌作用を示すことが明らかになった。また、その活性成分の化学的特性についても明らかになってきた。 根こぶ病菌の生体可視化については、緑色蛍光タンパク質遺伝子を根こぶ病菌体内で発現させるためのベクターの最適化を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
根こぶ病抵抗性遺伝子座の遺伝解析については、現在までに作成した連鎖地図上にさらにDNAマーカーを追加して遺伝子座の領域の特定を進めると共に、検出された抵抗性遺伝子座近傍のマーカーの塩基配列を解析して抵抗性遺伝子座に連鎖するマーカーの充実を図る。また、染色体未対応の連鎖群の対応付けを行う。さらに、同様の両親品種から作成した別のF2集団を用いて結果の追試を行う。 根こぶ病抑制効果を示す海藻資材の作用機序の解析については、根こぶ病菌に対する生理活性の評価を行う。具体的には、海藻資材を処理した休眠胞子や遊走子の挙動や形態観察、遺伝子発現変動の解析を行う。また、卵菌類に対する抗菌活性を指標として活性成分の分画を進め、責任物質の同定を試みる。 根こぶ病菌の生体可視化については、次のステップとして形質転換体選抜マーカーの開発を行う。
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Causes of Carryover |
根こぶ病抑制効果を示す海藻資材の作用機序の解析について、根こぶ病菌に先駆けて、人工培養が可能で比較的扱いが容易な卵菌類を用いた実験系を利用する方が効率的であることがわかった。そこで当該実験系を利用した解析を先行的に進めた結果、今年度の使用経費が少額になった。次年度に持ち越した経費については活性成分の分画や同定、根こぶ病菌の遺伝子発現解析に使用する予定である。
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