2023 Fiscal Year Research-status Report
園芸作物の老化制御機構におけるポリアミンの役割の解明
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23K05231
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 芳弘 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (20390891)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ポリアミン / 老化制御 / レアポリアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリアミンは第一級アミノ基を2つ以上持つ脂肪族炭化水素の総称であり、植物の代表的なポリアミンとして、ジアミンのプトレッシン、トリアミンのスペルミジン、テトラアミンのスペルミンとサーモスペルミンが知られている。これらのポリアミン類は、核酸と相互作用してタンパク質・核酸合成を促進する細胞増殖因子として働くだけでなく、様々な生理現象にも関わる機能分子である。近年の研究から、ポリアミン類は植物の老化制御機構にも関わる可能性が示唆された事から、本研究では、青果物や切り花など幅広い植物種を研究対象として、老化過程に関わるポリアミン代謝制御因子の特徴を理解する事、また、様々な植物種の中から老化制御能の高い機能性新規ポリアミン分子を探索する事、を目的としている。 令和5年度の研究では、生体内ポリアミンを高感度に分析する事が可能なガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、複数の植物種の老化過程での生体内ポリアミン動態を詳細に分析した。また、データベース上に存在する遺伝子配列情報および混合塩基プライマー群を用いたPCR法によって、それらの植物体内に保存されているポリアミン合成・分解に関わる遺伝子群の単離を行った。そのほか、一部の植物体のみが生産している可能性のある極微量ポリアミン分子の探索を行い、維管束を持たない植物種から、通常の植物体では検出されないレアポリアミン類を2種類発見し、それらのポリアミンの合成経路および合成に関わる因子の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況に関しては、概ね計画通りに進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、青果物や切り花の一部における老化時の生体内ポリアミン動態およびポリアミン代謝制御機構に関わる遺伝子群を単離する事ができた。そこで今後は、リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現量の詳細解析を行い、老化時に発現が強く誘導される因子、老化に先立ち発現が顕著に減少する因子、の双方を理解する。さらに、この解析により老化との関わり合いが推測された因子に関しては、大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質等を作製し、その特徴を解析する。また、一部の植物体のみが生産するレアポリアミン合成酵素遺伝子を同定する事もできた事から、レアポリアミン合成遺伝子をシロイヌナズナやトマトにおいて過剰発現させた植物体を作製する事で、老化との関連性に関しても詳しく調査する予定である。
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Causes of Carryover |
研究費を有効に使用する為、必要最低限かつ必要最小量の消耗品購入に努めて節約した事、そして、一部の研究が当初の計画よりも進展した事から、進展領域研究に関するエフォートを若干大きくし、経費使用割合が大きい一部の実験計画を次年度に回した事、の2点から未使用額が生じた。 生じた未使用費に関しては、前項「今後の研究の推進方策」で述べたR6年度に計画している研究計画を遂行する上で必要となる実験消耗品費、人件費等に充て、節約によって生じた分に関しては、これまでの研究で新たに発見された疑問点を明らかにする為の実験消耗品費、成果発表等に使用する予定である。
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