2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the ecology of the spotted rice stink bug and establishment of low environmental impact pest management system.
Project/Area Number |
23K05242
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
竹松 葉子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30335773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東浦 祥光 山口県農林総合技術センター, 農業技術部 資源循環研究室, 専門研究員 (30504956)
本田 善之 山口県農林総合技術センター, 農業技術部 資源循環研究室, 専門研究員 (50503926)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 斑点米カメムシ / 害虫防除 / 生物的防除 / 季節消長 / 越冬生態 / 土地利用情報 / 効果的な薬剤 / 人工越冬装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
斑点米カメムシの低環境負荷型防除対策を実現していくために大きく分けて4つの課題に分けて研究を行っている。 1.カメムシ類の生活史の解明:県内各地の有機水田における掬い取りや粘着板トラップ調査の結果から、山口県における斑点米カメムシ類の水田における発生時期が植え付け時期や出穂期の異なる品種や場所によって異なることが明らかとなった。 2.カメムシ類天敵の寄生生態の解明:水田におけるイネカメムシとホソハリカメムシの卵設置調査を行い、回収した卵から両種の卵寄生蜂の羽化を確認した。イネカメムシにおいては、キアシカメムシタマゴトビコバチ、Trissolcus属、Telenomus属の合計3属の寄生蜂を確認した。ホソハリカメムシはHadronotus属による寄生を確認した。2種のカメムシに対する寄生状況として、両者の産卵期間の終盤に寄生率が高まることが明らかとなった。 3.カメムシ及び寄生者の個体群動態に影響する環境要素の決定:水田調査を行った圃場に加え山口県の全域にて調査圃場を拡張し、全部で12地点において越冬成虫と新成虫の各発生ピークの水稲加害カメムシ類の発生量を調査した。 4.斑点米カメムシの生態を活用した防除対策の確立:イネカメムシ防除対策として、化学農薬ではジノテフラン剤、エチプロール剤の効果が高く、スルホキサフロル剤がそれに続くことが判明した。個別穂の被害粒解析により、イネカメムシ成虫は他の斑点米カメムシ類と比較して、不稔粒生産能力は高く、斑点米生産能力は同等であることが判明した。さらに、斑点米カメムシ類の人工越冬装置として大型トラップの開発を中心的に行い、ミカンコンテナ等、外壁に多数の穴を持つ容器にウッドチップを詰めたタイプのトラップに、多数のホソハリカメムシと一定数のイネカメムシが越冬のため入ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の成果として生物的防除に関して、イネカメムシの天敵寄生蜂として3属の寄生蜂を確認した。これまでイネカメムシ卵の寄生蜂の情報が全くなかった中で、一種のみではあったがキアシカメムシタマゴトビコバチが本種にも寄生することを初めて明らかにすることができた。タマゴクロバチ科の分類専門家との連携も良好に進んでいるため、研究期間内に一層の進展を期待できる状況にある。 耕種的防除について、1年目の成果として県内合計12地点から採集調査を行った。品種や地域が異なる圃場からの採集データが集まっており、2年目以降のデータを蓄積することでから、土地利用情報との比較解析に十分なデータが集まる見込みである。 防除対策として、既存の生物系農薬の効果は低く、化学農薬の効果が高いことが判明した。また、人工越冬装置では、ホソハリカメムシに関してはかなり有効な構造が明らかになった。イネカメムシは多数の越冬には至らなかったが、改善に繋がる複数の知見を得ることができたため、今後の効率向上を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
斑点米カメムシの低環境負荷型防除対策を実現していくための4つの課題について今後の推進方策を示す。 1.カメムシ類の生活史の解明:1年目と同様に、夏季の水田における発生調査、冬季の越冬地における越冬調査を引き続き行い、データの蓄積を行う。計画では越冬中の脂肪量調査を行う予定だったが困難であることがわかったので、卵巣発育程度や安定同位体の利用などの他の手法を検討する予定である。 2.カメムシ類の天敵の寄生生態の解明:寄生蜂の探索について、継続した調査、また前年度実施できなかった新鮮卵を用いる調査を加え、さらに詳細な寄生率や種の特定を行う。卵塊トラップによる捕獲数が多くない可能性もあるため、非破壊抽出による遺伝情報の収集が可能か検討を行いたい。 3.カメムシ及び寄生者の個体群動態に影響する環境要素の決定:1年目に蓄積した県内12地点での情報に加え、今後はこれまでの掬い取り調査をさらに蓄積し、GISを利用した土地利用情報とドローンによる画像を組み合わせた水稲品種の比率抽出データと組み合わせた解析を行う。これらによって、各圃場におけるカメムシ類や天敵寄生蜂類の発生量に影響を及ぼす要因について、環境要因、作付け体系の観点から明らかにする。 4.斑点米カメムシの生態を活用した防除対策の確立:引き続き薬剤別試験を行うと共に、薬剤散布の必要性を判断するためのモニタリング装置としてLEDトラップの有効性を確認する。また、斑点米被害は成虫に加え幼虫の加害も多いのではと指摘されているため、幼虫における斑点米形成能力の放虫試験を行う。今年の結果を踏まえて問題点を改良したイネカメムシの人工越冬装置での捕獲効率を確認する。同時に、より調査がし易くなる大きさにまで小型化を図る方向の改善も検討する。
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