2023 Fiscal Year Research-status Report
昆虫培養細胞と個体幼虫で増殖する潜在感染ウイルスを用いたベクター開発と安全性評価
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23K05252
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
岩永 将司 宇都宮大学, 農学部, 教授 (40400717)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 昆虫ウイルス / 持続感染 / ベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Bombyx mori iflavirus variant1(BmIV1)とBombyx mori taarstrup virus(BmTV)についてベクター化を目指した研究を進めた。 BmIV1については、まず、全長cDNAを獲得するため、ウイルス粒子が含まれる培養上清からウイルス粒子を粗精製し、RNAを抽出した。得られたRNAを基に5´RACEと3´RACEを行うことで、これまでに知られていない末端領域を同定することが出来た。その結果、5´側には2回の特徴的な繰り返し配列が含まれていることが明らかとなり、RNAの二次構造予測が特徴的なステムループ構造の存在を示した。次に、BmIV1の導入実験を行うため、多くの培養細胞をチェックすることでBmIV1陰性の培養細胞BmU-を得た。更に、調整し、得られた全長RNAをplasmid DNAに挿入し、BmU-細胞へのトランスフェクションによる感染性の確認を試みたが、感染性の確認には至らなかった。一方で、BmU-細胞にBmIV1を接種し維持継代することでBmU+細胞を調整し、BmU-細胞と比較した結果、細胞の増殖速度に全く違いが認められないことが明らかとなった。 また、本年度はBmIV1ポリプロテインのプロセッシング機構の解析にも取り組んだ。そのために、予測プロセッシング領域を一過性発現させタグの抗体を用いることでプロセッシングの有無を調べる実験系を構築した。次に、構築した実験系を用いてBmU-細胞、BmU+細胞、更にBmU-細胞へとBmIV1を急性感染した細胞でプロセッシングの調査を行ったが、プロセッシングを確認することは出来ず、BmIV1ポリプロテインはトランスではなくシスでプロセスされると予測された。 また、BmTVについても同様に、5´RACEと3´RACEによって全長のcDNA配列を決定した。更に、BmTV陰性細胞へとBmTVを接種する感染実験系の構築に成功した。得られたcDNA配列を詳細に調査した結果、BmTVはこれまでに知られているラブドウイルスとは異なる新規のものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究目的遂行のためにBmIV1とBmTVの基礎的な情報、感染実験系などの構築に成功した。また、感染性は確認できていないもののBmIV1については既に全長のcDNAを有するplasmid DNAの構築も出来ており、今後はin vitro転写によるRNA導入などの実験が可能となった。そのため、本年度は概ね順調に研究が進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、BmIV1についてはin vitro転写によるRNA導入を進めるとともに、導入RNAが翻訳されているかどうかを明らかにするためのFLAGタグ導入実験に取り組む。更に、BmIV1の抗体も作製するとともに、BmIV1の安全性評価についても解析を進める。一方で、BmTVについても抗体を作成するとともにその安全性評価に取り組む。得られた結果について学会や論文発表を行う。
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