2023 Fiscal Year Research-status Report
社会性昆虫の協力と侵略の分子的基盤の解明:フタモンアシナガバチをモデル生物として
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23K05256
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
土田 浩治 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00252122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50588150)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マイクロサテライト / フタモンアシナガバチ / 侵入個体群 / 在来個体群 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
フタモンアシナガバチのニュージーランド、オーストラリア、韓国、日本から採集した個体1233個体について、マイクロサテライト12遺伝子座のマルチプレックスによる遺伝子型の決定を行った。それに基づいて、集団遺伝構造の解析を行った。日本国内の個体群は、九州、奈良、石川、山形・北海道の4地域に特徴的な個体群が認められ、その他の地域はこれら4地域のいずれかが混合したような形をしていた。個体群間のFstによる無根系統樹からは、日本の九州地方、北海道と山形が近傍に位置し、これらの地域からの侵入したことが示唆された。また、九州地方が北海道と山形のサンプルと類似していたのは、九州地方の個体が過去にこれらの地域に分散した可能性が示唆された。これらのことは、九州地方の個体は国内に広く分散しやすい形質を本来から持っており、それがオセアニア地方への分散に貢献した可能性を示唆していた。 RNA-seq用のサンプルを採集した。女王が存在した8コロニーから女王とワーカーを回収し、頭部と腹部をRNAlaterで固定し、-20℃で保存した。胸部はDNAサンプルとしてアルコールで保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロサテライトの分析から、日本の在来個体群間に十分な遺伝的な変異が存在し、大きく4系統(九州、奈良、石川、山形・北海道)に分かれた。特に、山形・北海道の遺伝子型が九州に近いものを示したことは驚きであり、過去に九州地方からこれらの地域に移動分散した可能性を示唆していた。また、無根系統樹では山形・北海道がオーストラリアやニュージーランドに近い遺伝子型をしていた。これらのことから、侵入に伴う遺伝子の変化を探るには、単純な日本と侵入先であるオセアニアの個体を比較するより、日本国内での比較(九州 vs 奈良・石川;九州 vs 山形・北海道)と国間の比較(九州 vs ニュージーランド;九州 vs オーストラリア)を行う必要がある事が示唆された。当初の予定では全ゲノムシークエンスを視野に入れて比較する予定であったが、効率的に仕事を進めるために近縁種であるPolistes dominulaの情報を用いたリシークエンスを行うことを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
カスト間のRNA-seqはプロトコルにしたがってRNAを抽出し、実験を行う予定である。 リシークエンスに関しては、先端ゲノム支援に申請し、Polistes dominulaの情報をもとに全ゲノムシークエンスとリシークエンスを行うことを予定している。それを基に、侵入に伴った遺伝子の変化や、遺伝子重複の実態に迫る予定で合う。
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Causes of Carryover |
RNA-seq実験をしなかったことと、当初予定していた海外調査を次年度以降に繰り越したので次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)