2023 Fiscal Year Research-status Report
海流散布植物における生育適地の消失がメタ個体群構造に及ぼす影響
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23K05268
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石崎 智美 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20632433)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 海浜植物 / 遺伝的構造 / NGS解析 / GIS / 絶滅危惧 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、砂浜は、浸食や地盤沈下によって面積が減少し、海浜生物の生育地の急激な減少をもたらしている。本研究では、海浜植物スナビキソウのメタ個体群の維持に砂浜の減少が与える影響を明らかにすることを目的とし、局所集団間の遺伝的構造の解明、局所集団内の生育密度および遺伝的多様性と繁殖成功の関連性の解明、生育ニッチの解明を行う。 2023年度は、(1)集団間の遺伝構造と、(2)集団内の生育密度と繁殖成功の関連について調査を行った。(1)については、研究代表者はすでに本州の日本海側を中心にサンプリングを実施済みであったため、本年度は北海道(4地点)、瀬戸内海沿岸(2地点)、九州(4地点)の生育地で葉のサンプリングを行った。これにより、離島や本州太平洋側を除いて、国内の分布域をほぼ網羅したサンプリングを達成することができた。採集したサンプルからDNA抽出を行ったが、当初予定していたMIG-Seq解析まで行うことはできなかった。 (2)については、生育密度や砂浜面積をすでに測定している新潟県内の10地点で、繁殖成功の指標として自然状態での結果率(花数に対する成熟果実数)を測定した。生育密度が高いほど結果率が高くなり、繁殖成功と生育密度の間には正の相関が認められた。また、4地点では、訪花昆虫の種類と個体数、採蜜行動の有無、採蜜行動をとった時間を測定し、ハチ類の訪花が最も多いこと、生育密度が高いほど訪花頻度が増加することを明らかにした。さらに、衛星写真から、各生育地の半径2kmの範囲内に広がる森林面積を求めた。しかし、周囲の森林面積と繁殖成功に関連はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集団間の遺伝構造について、本年度中に分布域を概ね網羅するサンプリングを終わらせることができ、DNAの抽出まで行うことができた。しかし、当初予定していたMIG-Seq解析まで着手することができなかったため、「やや遅れている」と判断した。集団内の解析については、繁殖成功を測定することができ、当初の計画通り行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
MIG-Seq解析を進め、解析環境の構築を行う。また、局所集団内の遺伝的多様性を調べるため、集団内の多数の個体からサンプリングを行い、MIG-Seq解析を行う。さらに、生育ニッチ(生育適地)の解明のために、局所集団内の地形の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に予定していたMIG-Seq解析を行わなかったため、MIG-Seq解析用キットを購入するための物品費に余剰が生じた。今後、MIG-Seq解析に早急に取り組み、当初の予定通り物品費として使用する。
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