2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of selective isolation methods and conservation of genetic resources for elucidating the ecological distribution of the extremely rare motile actinomycetes.
Project/Area Number |
23K05270
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
山村 英樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70516939)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超希少放線菌 / 遺伝資源 / 選択分離法 / バッファー / 落葉 / 分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌は土壌などの環境試料中に多く存在しており、その多くはStreptomyces属が占めている。一方で、残り5%は希少放線菌と呼ばれ、さらに運動性放線菌は1%にも満たない存在である。我々はこの1%を選択的に分離する技術として「バルク土壌浸漬法」を開発したが、植物の落葉から分離には適していなかった。そこで、落葉から超希少な運動性放線菌を分離する方法を確立し、遺伝資源として保全を行うことを目的とした。具体的には、落葉をろ紙ではさみ、誘引剤を保持するアルミカップを定置する方法をサンドイッチ法とした。 基本的な分離法の設定は行う事が出来ているため、今年度は実際の分離法で使うバッファーについて検討を行った。3種類のGoodのバッファーでそれぞれpHを3点(MES:pH 5.5、MOPS:pH 7.0、CHES:pH 9.0)設定し、それぞれのpHで誘引される運動性放線菌の多様性について次世代シーケンサーにて評価を行った。なお、今回は初期的な検討ということでバルク土壌浸漬法を使った。その結果、コントロールとして水のみの場合は非常に多様な微生物群が検出されたが、ろ紙とバッファーを用いた場合では多様性(OTU数)は1/3~1/6に低下した。言い換えれば、選択性が3~6倍に上がる事が示された。放線菌の種類については代表的な運動性放線菌であるActinoplanes属が主要であったが、次いで、Gaiella属が比較的多く検出され、Nocardioides属、Cellulomonas属が続いた。pHについてはMOPSおよびCHESで運動性放線菌が同程度検出され、CHESでのみ検出される分類群も見られた。しかし、MESは比較的検出頻度が低く、MESでのみ検出される分類群もほぼなかった。以上のことから、サンドイッチ法で利用するバッファーはMOPSおよびCHESが最適であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サンドイッチ法構築にあたり、以下の方法で実施した。蒸留水で湿らせたろ紙(1段目)に湿らせた落葉を置き、その上にさらに湿らせたろ紙(2段目)を定置した。さらに2段目にはペニシリンカップ(抗生物質検定用)を置き、バッファーを入れたが誘引時間(30分)以内に液が流出してしまった。そこで、滅菌した脱脂綿にバッファーを入れることにより液の流出を防ぐことができた。バッファーについては3種類のGoodのバッファーでpHを3点(MES:pH 5.5、MOPS:pH 7.0、CHES:pH 9.0)に設定し、それぞれ誘引される運動性放線菌の多様性について次世代シーケンサーにて評価を行った。その結果、放線菌の中ではActinoplanes属が主要であったが、次いで、Gaiella属やNocardioides属、Cellulomonas属などが検出された。Gaiella属は現在、1科1属1種の超希少な放線菌である。原著論文では運動性はないと記されているが、ゲノム情報を見てみるとフラジェリンなどの遺伝子が見られたことから、更なる分離株とより詳しい調査次第では運動性がある分類群である可能性がある。また、pHについてはMOPSおよびCHESで運動性放線菌が同程度検出されたことから、これらを選択分離用バッファーとした。当初は2023年度内に構築した方法を用いて、実際の落葉からの分離を行う予定であったが、サンプルによってはバクテリアの出現数が想定以上になるサンプルが見られたため、バクテリアを抑制する抗生物質添加や試料の乾熱などの前処理法を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、次世代シーケンサーの結果から当初は予想していなかったGaiella属がある程度の割合で検出された。この属を分離する事を今後の目標の1つとし、Gaiella 属が分離されたときの培地であるR2A寒天と一般的な放線菌の選択分離培地であるHV寒天を併用していく。また、2024年度の早いうちに試料の乾熱処理、もしくは抗生物質添加などの前処理法にてバクテリアの出現抑制を評価していく。乾熱処理は100℃で10分程度を想定しており、抗生物質はキノロン系(オールドキノロン)、キノロン系(ニューキノロン)から10化合物程度を選抜していく。さらに、落葉については現在入手可能などんぐり、イチョウなどは入手しており、近くの森林土壌についてもサンプリングを行う予定である。そのため、2024年の9月頃までには分離方法を確立し、10月以降に様々な落葉サンプルから運動性放線菌の分離を行い、16S rDNAの解析から新規性の高い分離株の取得を目指す。分離株についてはNBRCなどの微生物保存機関に寄託し、分類学的試験を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた分離株のシーケンスについて実施できなかったため、その分を次年度に繰り越すことになった。
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