2023 Fiscal Year Research-status Report
渇水緩和・洪水調節の視点からみたブナ林土壌の保水機能の二面的定量評価
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23K05321
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大貫 靖浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (10353616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 尚之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30537345)
新田 響平 秋田県農林水産部(農業試験場、果樹試験場、畜産試験場、水産振興センター及び林業研究研修センター), 林業研究研修センター, 研究員 (50640637)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ブナ林土壌 / 保水機能 / 渇水緩和 / 洪水調節 / 土層厚 / 土壌物理特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
微地形と土層厚の対応関係を明らかにするため、斜面微地形判読と土層厚測定をブナ林試験地内の多点で実施した結果、斜面中腹の傾斜変換線を境に上方では厚く、下方では薄いことが明らかになった。このことは、水源涵養機能向上に向けた施業の進展に貢献する。 地形測量および目視による斜面微地形判読を、試験地上流部の187地点で実施した。判読した微地形単位は、頂部斜面、上部谷壁斜面、谷頭急斜面、谷頭斜面、谷頭凹地、下部谷壁斜面、麓部斜面、段丘化谷底面、谷底面、河道の計10単位である。このうち、斜面上方の頂部斜面、上部谷壁斜面、谷頭凹地の下側には、明瞭な傾斜変換線(遷急線)が存在する。試験地内中央を東西に流れるノロ川本流の右岸側には、急傾斜の下部谷壁斜面や崩積性の麓部斜面が各所に分布するが、傾斜の緩い左岸側にはほとんど認められず、右岸側と左岸側で非対称な地形断面を示した。 土層強度検査棒を用いた土層厚測定を、斜面微地形判読を行った187地点で実施した。河道付近では、岩盤や石礫の露出等により測定不能・不可地点が何点かみられた。遷急線下方の谷底面、段丘化谷底面、下部谷壁斜面では、土層厚が1m未満の地点が多かった。これに対し、遷急線上方の谷頭凹地、谷頭斜面、上部谷壁斜面では、土層厚が2m以上の地点が多く、一部では4m以上に達した。このように、遷急線を境にして、斜面上方では斜面下方よりも土層厚が2倍以上厚いという明瞭な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに調査研究を進め、試験地上流部の微地形分類図と土層厚分布図を作製できた。本プロジェクトに関わる成果に関して、初年度からの積極的な学会発表を行い、成果の社会還元に取り組んだ。共同研究を実施している秋田県および秋田県林業研究研修センターと緊密なやり取りを行い、研究分担者との調査協力によって、植生・土壌データを共有しながら共同研究が進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
斜面微地形判読を継続し、試験地全体の微地形単位分布図を作成する。また、試験地内のいくつかの微地形単位で代表土壌断面調査を実施し、土壌円筒試料を用いた透水性・保水性測定を行い、土壌物理性データを蓄積する。得られた微地形・土層厚および土壌物理性データを教師データとして提供し、土層厚分布モデルの改良と保水能予測マップの開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
当初は令和5年5月に融雪直後の現地調査に入る予定であったが、融雪と大雨による林道脇の土砂崩れにより、入林を断念した。次年度は繰越分を使用して融雪後の現地調査に入る予定である。
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