2023 Fiscal Year Research-status Report
Neurophysiological study of olfactory responses to imprinted odorants in artificially olfactory imprinting salmonids.
Project/Area Number |
23K05380
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 秀明 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40289575)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | サケ属魚類 / 母川回帰 / 嗅覚刷込 / 行動 / 神経興奮 / cfos / カラフトマス / ヒメマス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人為的に嗅覚刷込を形成させた実験魚を用いて、行動学的および分子生物学的側面を統合した神経科学的にサケ類の母川刷込を解析することにより、①仔魚期の刷込能の評価、②刷込ニオイ分子を嗅ぎ、想起することで興奮する脳領域の特定、③非刷込・非想起時における刷込ニオイ分子への反応の3点を明らかにすることを目的とする。本研究で得られる知見から、母川刷込機構の解明が前進し、ふ化放流事業における「仔魚期刷込」を考慮する必要性の有無および母川刷込に関わる脳領域が機能領域の解析が進んでいる哺乳類脳のどこに相当するかの知見から、脳内情報処理の詳細を明らかにすることができる。 初年度については、事前に作製していた仔魚期と稚魚期に10^-7Mβ-フェニルエチルアルコール (PEA)を人為的にそれぞれ刷り込ませた淡水飼育カラフトマスおよび仔魚期と幼魚期に同様にPEAを刷り込ませた淡水飼育ヒメマスを用いた。成熟前の非想起個体および成熟後の想起個体を用いて、PEAに対する選好性の行動学的試験およびPEA曝露した際の嗅神経系の神経興奮を最初期遺伝子の1つ cfos 遺伝子の発現をリアルタイム定量PCRで分析するための組織採集を行った。行動実験は、本学北方生物圏フィールド科学センター洞爺臨湖実験所に設置されているY字水路を用いて行った。片側のアームからPEAを含む水を流した際の行動を完全暗条件下で赤外線ビデオ撮影を上面から行い、動画データを入手した。動画データが多いことから、一部しか分析は終了していないが、分析した項目(行動の評価指標)では、個体差が大きく、PEAへの有意な選好性を示す統計学的結果が得られていない状況である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように、仔魚期と稚魚期に10^-7Mβ-フェニルエチルアルコール (PEA)を人為的にそれぞれ刷り込ませた淡水飼育カラフトマスおよび仔魚期と幼魚期に同様にPEAを刷り込ませた淡水飼育ヒメマスの成熟前の非想起個体および成熟後の想起個体を用いて、PEAに対する選好性の行動学的試験およびPEA曝露した際の嗅神経系の神経興奮をcfos 遺伝子の発現をリアルタイム定量PCRで分析するための組織採集を行ったが、行動実験は動画データの解析が途中である。分析を終えた、左右のアームでの「総滞在時間」については、個体差が激しく、当初予想していた明瞭なPEAへの選好性を示す行動が観察されていない。また、こちらは想定内の進捗状況だがcfos 遺伝子の発現解析は、各嗅神経系組織(嗅房、嗅球、終脳)をRNA保護保存液中で冷凍保存している状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた行動試験の動画データ解析では、「総滞在時間」以外の未分析の行動評価指標項目について解析を進めていくと共に、冷凍保管中のRNA分析用標本を用いて、cfos 遺伝子発現を指標とした神経興奮の解析を進めていく予定である。さらに、今年度秋季には洞爺湖において放流前の仔魚期にPEA、稚魚期に飼育水に含まれないアミノ酸、プロリンを人為的に刷り込ませた成熟親魚が実験所の魚道に回帰し始める予定である。その個体を用いて、初年度と同様の解析と神経興奮については細胞レベルでの解析が可能なin situ ハイブリダイゼーションによるcfos発現解析にも着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
元々、cfos遺伝子解析のメインは次年度2024年度の予定であったが、できれば初年度2023年度にも全RNA抽出まで着手したい希望があって計上していた。実際には、抽出前の状況での保管に留まったため、次年度には必要な試薬類を追加購入し、cfos遺伝子解析を進めていく予定である。
|
Research Products
(3 results)