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2023 Fiscal Year Research-status Report

Exploring the relationship between yellow development and the control of calcium carbonate crystallization in the nacre produced by Akoya pearl oyster

Research Project

Project/Area Number 23K05382
Research InstitutionMie University

Principal Investigator

柿沼 誠  三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (60303757)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2026-03-31
Keywordsアコヤガイ / 真珠層 / 黄色真珠 / 黄色発現 / 黄色色素 / 鉄代謝 / ポルフィリン / 生体色素
Outline of Annual Research Achievements

アコヤガイの外套膜が作り出す真珠は,有機基質層と炭酸カルシウム結晶層が交互に重なった積層複合構造をもつ真珠層からなる.アコヤガイ真珠の美しい輝きと色は,積層複合構造による光の反射や干渉と,真珠層中の色素成分が複雑に関与し合って発現する.真珠層の黄色発現には鉄(Ⅲ)イオンや生体色素(ポルフィリンなど)が関与しているが,その発現機構と真珠層の物理化学的性質に及ぼす影響は十分に解明されていない.本年度は,鉄(Ⅲ)イオンと生体色素の代謝関連遺伝子の発現解析,さらに真珠層の黄色度と物理化学的性質の評価を試みた.
まず,アコヤガイ・ゲノム配列データベースを利用して,鉄(Ⅲ)イオンと生体色素(ポルフィリン,メラニン)の代謝関連遺伝子の塩基配列情報を取得して定量PCR解析を行った.黄色系および白色系真珠層をつくるアコヤガイ外套膜の間で各遺伝子発現量に有意差は認められなかったことから,アコヤガイ貝殻真珠層の黄色発現には,他の代謝関連遺伝子が関与している可能性が考えられた.
次に,黄色系および白色系アコヤガイ貝殻真珠層の黄色度(YI)を評価後,走査電子顕微鏡観察およびレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析に供し,真珠層の結晶層厚と鉄分布を調べた.その結果,黄色系貝殻真珠層で結晶層が厚く鉄の分布密度が高くなる傾向が認められた.また,貝殻真珠層の粉末を波長分散型蛍光X線分析およびX線回折分析に供し,真珠層の鉄含量と結晶子サイズを調べた.その結果,真珠層のYIと鉄含量の関係を明らかにするには至らなかったが,黄色系貝殻真珠層で結晶子サイズが大きくなる傾向が認められた.これらの結果から,真珠層の黄色発現(黄色色素の多寡)は結晶層の微細構造や炭酸カルシウム結晶構造に影響を及ぼしている可能性が考えられた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では,黄色発現がアコヤガイ真珠層の物理化学的性質に及ぼす影響の解明,鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝経路と炭酸カルシウム結晶化制御機能の解明,黄色発現と結晶化制御の鍵遺伝子の特定を目的としている.
本研究実施計画は(1)黄色系貝殻真珠層の物理化学的特性の解明,(2)鉄(Ⅲ)イオンの代謝経路と結晶化制御機能の解明,(3)ポルフィリンの化学特性と代謝経路の解明,(4)黄色発現・結晶化制御の鍵遺伝子の機能解析,に大別されており,本年度は当初計画通りに(1),(2),(3)を実施した.ほぼ計画通りに研究が進み,研究実施計画(1)においては,貝殻真珠層の黄色度と物理化学的性質(光学特性,元素組成(鉄含量),結晶構造)との関係性の一端を明らかにすることができた.研究実施計画(2)と(3)においては,アコヤガイ・ゲノム配列データベースから鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝関連遺伝子を抽出し,黄色系および白色系真珠層をつくるアコヤガイ外套膜における各遺伝子の発現特性を把握することができた.アコヤガイ貝殻真珠層の黄色発現には,他の代謝関連遺伝子が関与している可能性が示唆されたため,鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝経路解明のために次年度も引き続き研究実施計画(2)と(3)に取り組む.

Strategy for Future Research Activity

本年度の研究実施計画(2)鉄(Ⅲ)イオンの代謝経路と結晶化制御機能の解明,(3)ポルフィリンの化学特性と代謝経路の解明,においては引き続き鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝関連遺伝子の単離・同定に取り組む.アコヤガイ・ゲノム配列データベースを利用して,鉄(Ⅲ)イオン代謝,炭酸カルシウムの結晶化制御,ポルフィリン代謝に関与する候補遺伝子を抽出し,黄色系貝殻真珠層と白色系貝殻真珠層を形成するアコヤガイの外套膜における各候補遺伝子の発現差異を明らかにする.各候補遺伝子の外套膜における発現特性と,外套膜が作る貝殻真珠層の黄色度との相関を調べ,アコヤガイ外套膜における鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝経路を明らかにすると共に,両代謝経路の制御系と炭酸カルシウム結晶化制御に関わる候補遺伝子を特定する.
次年度の研究実施計画(4)黄色発現・結晶化制御の鍵遺伝子の機能解析,においてはまず,鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝経路の制御系,炭酸カルシウムの結晶化制御に関わる候補遺伝子のcDNAクローニングを行う.各遺伝子cDNAを利用して,RNA干渉に必要な長鎖(または低分子)二本鎖RNA調製用ベクターを構築する.本年度整備したin vivoエレクトロポレーション装置などを用いて二本鎖RNAをアコヤガイ外套膜に導入し,RNA干渉で誘導される貝殻真珠層の形質変化を調べることで候補遺伝子の機能を明らかにする.

Causes of Carryover

[理由]本年度の研究実施計画(2)鉄(Ⅲ)イオンの代謝経路と結晶化制御機能の解明,(3)ポルフィリンの化学特性と代謝経路の解明,において外套膜における鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝経路の一端を明らかにすることができたが,各代謝経路の制御系や炭酸カルシウムの結晶化制御に関わる候補遺伝子の単離・同定に至らなかったため,次年度使用額が生じた.
[使用計画]本年度の研究実施計画(2)と(3)のうち,未着手となっている鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝関連遺伝子の単離・同定に次年度直接経費の約20%,炭酸カルシウムの結晶化制御関連遺伝子の単離・同定に次年度直接経費の約30%を使用する.次年度の研究実施計画(4)黄色発現・結晶化制御の鍵遺伝子の機能解析,については当初の計画通りに着手し,研究実施計画(2)と(3)で特定された鉄(Ⅲ)イオンとポルフィリンの代謝関連遺伝子,炭酸カルシウムの結晶化制御関連遺伝子の機能解析に必要な試薬類,エレクトロポレーション関連消耗品の購入に次年度直接経費の約40%を使用する.また,次年度直接経費の約10%を学会発表等の旅費や学内共同研究機器の利用費に使用する.

  • Research Products

    (2 results)

All 2023

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] アコヤガイ貝殻真珠層の黄色度と物理化学的性質の評価2023

    • Author(s)
      前川葉奈,鈴木道生,永井清仁,前山 薫,服部文弘,安元 剛,渡部終五,舩原大輔,五十嵐洋治,柿沼 誠
    • Organizer
      令和5年度日本水産学会秋季大会
  • [Presentation] 真珠層の黄色発現と色素2023

    • Author(s)
      柿沼 誠,鈴木道生,永井清仁
    • Organizer
      真珠研究シンポジウム2023-真珠研究の今を伝えるpart 2-

URL: 

Published: 2024-12-25  

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