2023 Fiscal Year Research-status Report
生体防御システムの分子機構を基礎とした甲殻類保蔵技術の開発
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23K05390
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
増田 太郎 摂南大学, 農学部, 准教授 (40395653)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フェノールオキシダーゼ / ヘモシアニン / 甲殻類 / クルマエビ / 食用甲殻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで、甲殻類ポストハーベストにおける黒変反応の主因となる酵素として、肝膵臓で生合成され体液中に分泌される新規なフェノールオキシダーゼ (PObeta)を見出した。この酵素は、クルマエビ体液中のPO活性本体であり、既知の血球型POと酸素運搬タンパク質・ヘモシアニンのいずれとも異なる一次構造を有していた。 クルマエビ科のエビ類は食品として極めて重要で、国内外を問わず甲殻類の養殖生産の大部分を占めている。本研究では、他のクルマエビ科エビ類と、クルマエビとは分類的に異なる種々の食用種について、体液中のPO活性の主因を探索した。その結果、クルマエビ科エビ類の多く(バナメイエビ、ブラックタイガーエビ、クマエビなど)からは共通して高い体液中のPO活性が認められた。他方、シャコ、ガザミなどの異なる分類群の食用甲殻類では、血球細胞を除いた体液中のPO活性はほぼ検出されなかった。 バナメイエビにおけるPO活性本体を精製し、詳細に解析したところ、バナメイエビ体液中のPO活性本体は、クルマエビPOβに類似した一次構造を持つタンパク質であることが明らかになった。また、遺伝子発現の傾向についても、クルマエビPOβと同様、肝膵臓での活発な転写が認められた。このタンパク質もN-末端にシグナルペプチドを有することから、バナメイエビPOβとした。以上の結果から、体液型PO (POβ) は、少なくともクルマエビ体液中においては広く存在し、PO活性の主因となっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた知見を、広範な分類群を包含する食用甲殻類に広げ、生体防御の中心的な因子であるPOを通した種分化と分子進化的な視点からも知見が得られる可能性があるため。
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Strategy for Future Research Activity |
体液型PO (POβ)について、その普遍性と生体防御への寄与を明らかにすることを目的に研究を進める。 生理的な意義については、生体試料の調達が容易なクルマエビを用いて行う。POβの普遍性については、甲殻類の系統進化においてクルマエビ科とは異なるグループの食用甲殻類の体液のPO活性を幅広く解析し、そのPO活性本体を単離する。
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Causes of Carryover |
食用甲殻類を題材とした研究を計画、実行しており、市場で生体が調達困難な場合は、漁業の現場にて購入と試料の処理を行う必要がある。2023年度は、ホッコクアカエビ、トヤマエビなどの現場での調達が不調であり、2024年度に改めて行うこととした。 また、飼育実験についても、主として2024, 2025年度に行うため、次年度使用額が生じた。
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