2023 Fiscal Year Research-status Report
魚類アレルゲン(パルブアルブミン)の耐熱性に関わる因子の解明
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23K05392
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 征洋 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (30511753)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | パルブアルブミン / 耐熱性 / アレルゲン / 魚類 / 熱変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類アレルギーで共通するアレルゲンはパルブアルブミンという耐熱性タンパク質で、様々な魚種がアレルギーを誘発する。魚種によりアレルギー発症のリスクは異なり、パルブアルブミン含有量が多い魚種ほど発症リスクが高いと考えられている。しかし、症例数の多いサバ類はパルブアルブミン含有量が少ないなど、含有量だけでリスクの強弱を解釈することはできない。また、症例数の多い魚種の中には、パルブアルブミン含有量は少ないが、魚肉のIgE反応性が高い耐熱性を示す魚種も存在する。このことから、アレルギー発症のリスクにはパルブアルブミンの耐熱性も関与していると予想される。パルブアルブミンの耐熱性の解析に先立ち、変性温度の測定法を確立する必要がある。パルブアルブミンの精製は煩雑であり収量も少ないことから、大腸菌で発現させた組換えパルブアルブミンを作製した。また、示差走査熱量測定法ではなく微量で測定可能なPCR装置を利用した示差走査蛍光光度測定法による変性温度測定法の確立を試みた。また、パルブアルブミンの変性温度が100℃を超えることから、変性温度を添加して変性温度を下げ、変性剤濃度の違いによる変性温度の変化から変性剤非存在下における変性温度を推定した。蛍光色素の種類および濃度、カルシウム濃度、昇温速度、緩衝液の種類によって変性時にみられる蛍光強度上昇の検出が難しかったが、限られた条件において変性温度の測定が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
想定していたよりも変性温度の測定法の確立が難しかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)パルブアルブミン遺伝子は複数存在するが、筋肉で発現するホモログは限られている。そこで、リアルタイムPCRを行って筋肉において高発現しているホモログを特定する。2)複数の魚種の組換えパルブアルブミンを作製し、それぞれの変性温度を調べる。3)データベース上の立体構造データを使用し、分子内部のアミノ酸側鎖間の相互作用のうち、耐熱性が高いパルブアルブミンのみでみられる相互作用を特定する。4)この相互作用を起こしているアミノ酸を性質の異なるアミノ酸に変異させた組換えパルブアルブミンを作製し、変性温度が変化するかを調べる。これにより、その残基が耐熱性に関与する残基であるかを調べる。
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Causes of Carryover |
想定していたよりも解析が難しくて難航し、予定していた他の実験を開始できなかったため。次年度より実施できなかった実験を開始する。
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