2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K05400
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 亮平 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 助教 (90458951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 瑞姫 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 助教 (20880462)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 棘皮動物イトマキヒトデ / 変態 / 変態誘起バクテリア / 遺伝子共発現ネットワーク / シグナル伝達経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
棘皮動物イトマキヒトデは、浮遊生活を送る幼生期から底生生活を送る成体に変態する際、岩場などの固着基質表面に存在するバイオフィルムを必要とする。本研究では、先行研究で取得済みであるイトマキヒトデの変態過程を網羅したトランスクリプトームデータを用いて、バクテリア刺激の直下で発現上昇する遺伝子群から変態誘導シグナルを同定するものである。 今年度は、ブラキオラリア幼生のRNA-seqデータと、濾過砂利、またはレチノイン酸で変態を誘起した変態初期過程のRNA-seqデータを比較し、変態初期過程特異的に発現上昇する遺伝子群を得た。続いて、これらの遺伝子群における変態の全ステージのトランスクリプトームデータを用いて、マルチスケール埋め込み遺伝子共発現ネットワーク分析(MEGENA)を行い、12個のサブネットワークから構成される共発現ネットワークを得た。個々のサブネットワークの発現パターンから、変態初期過程で発現量の高いサブネットワークを同定し、機能アノテーションのエンリッチメント解析を行った。その結果、TLR経路やNFκB経路を中心とした免疫関連シグナル経路がエンリッチされていることが明らかになった。 そこで、TLR4選択的阻害剤であるTAK-242やIKKβの阻害剤であるIKKβ Inhibitor VIを用いて、変態が阻害できるか検証した。その結果、基質に固着する個体が有意に減少しただけでなく、固着の有無に関わらず、阻害剤で処理した全ての個体が変態しなかった。以上の結果から、変態の進行には、変態を誘起するバクテリアの認識によってNFκB経路が活性化される必要があることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトームデータの解析パイプラインが順調に構築でき、ほぼ当初の計画通りに研究を推進できている。このパイプラインを用いて得られたシグナル伝達経路の阻害によって変態が阻害できたことにより、変態の開始に必須のシグナル伝達経路が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
変態の開始にNFκB経路が重要な役割を果たしていることが強く示唆されたことから、当初の計画通り、この経路の阻害によって変態の進行に必要なレチノイン酸経路の活性化が阻害されるかをqPCR法によって検証する。 また、NFκB経路の構成遺伝子を複数クローニングし、変態初期過程において、これらの遺伝子が幼生のどの組織で強く発現しているか、in situ hybridizationによって調べる。In situ hybridizationでは、ホールマウントに加え、切片を用いた発現解析も試みる予定である。それに先立ち、まず変態過程のサンプルから質の高い切片の作製方法を検討する。 一方、阻害剤を用いた変態誘起アッセイの結果、TLR4選択的阻害剤であるTAK-242が変態を阻害することが明らかになったが、脊椎動物においてはTLR4はグラム陰性菌に対するパターン認識分子である。予備実験からLPSの投与のみでは変態を誘起できていないため、TAK-242の標的分子が実際にTLR4のオーソログであるかはよくわかっていない。TAK-242の阻害効果は、哺乳類のTLR4の細胞内領域に存在するTIRドメインであることから、トランスクリプトームデータを用いて、TAK-242の標的になりうる遺伝子の探索も行う予定である。
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Causes of Carryover |
概ね順調に進んでいるものの、論文の執筆がやや遅れたため、論文出版用の予算の大半が未使用となった。一方、研究は当初の計画をやや前倒しで進めることができており、一部を消耗品費に充当した。 次年度は、現在執筆中の論文を出版するとともに、消耗品費は遺伝子の発現解析用の試薬やキット類を中心に使用する予定である。
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[Presentation] Prediction of the process for the immune system maturation in the sea star, Patiria pectinifera.2023
Author(s)
Taguchi, M., Minakata, K., Sato, H., Tame, A., Furukawa, R.
Organizer
15th Congress of International Society of Developmental and Comparative Immunology
Int'l Joint Research
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