2023 Fiscal Year Research-status Report
激甚化する自然災害の影響評価と持続的な農村開発戦略の策定
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23K05406
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (90292672)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 洪水リスク / 住民評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は洪水リスクの高い国についての比較分析を行うものであり、従ってリスク評価には共通の枠組みが用いられる必要がある。しかし、居住地域の洪水リスクについて、国際的に統一されたフォーマットでの資料提供はなされていない。海外の研究対象地域では、ハザードマップが未整備であるか、最新のデータを用いた情報更新がなされていない、もしくはハザードマップが整備されていても住民への周知が十分に行われていないことが分かった。そこで、GIS解析による洪水リスクの評価を行うため、その実効性を過去に行った資料(比国での台風リスクの主観的評価値)と併せて検討した。 GIS解析には、マイクロ波の反射により作成される合成開口レーダーを用いた。住民の記憶に新しい洪水の状況を定量化するため過去1年間の画像データを用いることを基本とし、さらにこの期間内での傾向を把握するため、乾季に撮影された複数の画像から作成された平均画像と,台風被害が大きかった11月・12月の複数の画像から作成された平均画像との変化を評価した。重ねる画像の枚数を変えて試行を繰り返したが、明確な関連性は見られなかった。この点については、次年度以降も評価方法を変えるなどして分析を継続する。 本年度の後半には、洪水経験や洪水の可能性評価、被害の想定、対策、カスケードハザードの認知、居住環境などについての国内WEB調査を実施した。広域の調査(大標本)の調査を行うことが予算的に難しかったため、調査対象地域は、江戸川流域という共通のハザードのある市町村から比較的市民の属性が似ている松戸市と市川市を選定し、それぞれ300件を目標に収集した。集計の結果、カスケードハザードを身近なリスクとして認識している人は1割程度であること、洪水リスク評価は評価対象期間の長短には影響されにくく、住環境の違いからの影響を受けるものの、それは限定的であることなどが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GISの解析結果を村落やそれ以下のレベルに集計度を落として、別の分析に用いることは精度面で一般的に難しい。我々の研究でも、GISによる洪水リスク評価、もしくは、住民評価データのとり方に問題があることが分かったが、これは想定の範囲内の障害であり、今後も様々な改良を加えながら柔軟に対応していきたい。また、今年度は計画通り国内WEB調査を行うことができた。こちらの解析はまだ十分に行われていないが、研究の初年でもあり、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度と設問内容や実施条件を揃えた比較可能な形での海外でのWEB調査を実施する。当初計画では、フィリピン、タイ、ウガンダでの調査が企画されているが、円安や物価高の影響から予算が足りない可能性が出てきているため、調査の優先順を再検討したい。併せて、今年度収集した国内WEB調査の分析を進めるとともに、GIS解析の再検討、既存のハザードデータとの比較などを行う。そして、信頼性の高いデータが揃い次第、個人属性や世帯属性や地理的(空間的)属性との関連性の把握を試みる。
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