2023 Fiscal Year Research-status Report
有機農業における生産知識のナレッジマネジメント構造の解明に関する研究
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23K05430
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
山口 創 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (10709281)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ナレッジ・マネジメント / 有機農業 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
慣行農業を対象とした先行研究やナレッジマネジメント研究では、知識共有・創造の場としてコミュニティの重要性が指摘されており、本研究の課題である有機農業におけるナレッジマネジメント構造を解明する上でも、有機農家コミュニティが知識共有・創造においてどのような機能を有しているのか、明らかにする必要がある。 本年度は、まず兵庫県A市にてニンジン等の共同出荷をおこなう若手有機農家コミュニティを対象に生産知識の共有や創造の実態をインタビュー調査にて明らかにした。なおインタビュー調査はコミュニティに参加する7名全員におこなった。結果、有機農家コミュニティは情報交換の場としてだけでなく、問題発生時には課題解決策を導き出す知識創造の場として機能していることが示された。特に、このコミュニティの機能は有機農業歴の浅い農家から、技術向上や収量・品質向上に貢献していると高く評価されていた。 次に、有機農家の農法の発展プロセスに関するインタビュー調査を、兵庫県A市の有機農家5名を対象におこなった。結果、A市の有機農家に広く知られている共通の有機農法と各農家が研修先で得た知識・技術を合わせて各農家固有の農法を構築していることが示された。 さらに、有機農業における地域固有の伝統農法の援用可能性についても検討した。資源循環型農法の一つと捉えられる伝統的農法が広く残る徳島県B地区を事例に7名の農家にインタビュー調査を行い、慣行農業が普及するなか伝統的な資源循環農法がどのように変化したのか、時系列的に調査分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心課題である有機農家コミュニティのナレッジマネジメント活動、有機農家の固有農法の確立プロセスに関する調査をすすめた結果、分析枠組みを構築することができた。次年度以降、継続して調査事例を増やしていくことにより、学術論文等で研究成果を公表できると考えている。加えて予備調査をすすめた結果、鳥取県における調査対象コミュニティも複数確保することができた。また関係機関との協力体制も構築できため、円滑に調査を進めることができると考えている。 一方で、兵庫県A市にてこれまで調査先の選定等で協力関係にあったカウンターパートが異動し、今後、調査協力を得づらい状況となった。今後更なる調査対象を広げていく上でカウンターパートの確保が不可欠であり、今後関係機関と連携をとり調査体制を再構築していきたい。 これらの状況を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査サンプルを増やしていく上で、カウンターパートの確保が必要である。鳥取県での有機農家のインタビュー調査については、普及センター等の関係機関と協力関係を構築できており、すでに調査対象の選定等の支援を受けている。本年度、主に調査をすすめてきた兵庫県A市においても関係機関との連携をすすめ、より円滑に調査をすすめることができるように協力体制を構築したい。
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Causes of Carryover |
本年度は、鳥取県内及び兵庫県内と近隣での調査を優先し実施したため、当初計画より旅費の執行額が少なくなった。次年度は、鳥取県、兵庫県に加えて熊本県等での調査を予定しており、繰越分は調査旅費として執行予定である。
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