2023 Fiscal Year Research-status Report
酪農における乳質評価の高度化と経営戦略の展望:脂肪酸レベルからみる新たな酪農像
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23K05435
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
淡路 和則 龍谷大学, 農学部, 教授 (90201904)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 酪農 / 乳質 / 飼料 / 脂肪酸製剤 / 乳価 / 自給飼料 |
Outline of Annual Research Achievements |
牛乳の乳質評価における脂肪酸の影響について、まずは酪脂肪酸製剤の添加の実態に迫るため、①酪農経営において脂肪酸製剤をどの程度利用しているのか、②利用している経営はどのような特徴があるのかを調査・整理した。酪農経営における脂肪酸製剤添加については、北海道では25%、九州では40%であり、愛知県で36%であり、温暖地になるほど添加する経営の割合が高くなっていた。これは、生乳取引において乳脂肪分が主要な基軸となっていることが影響しているといえた。その添加行動については、ひとつは、とくに夏季において乳脂肪分が下がった際にそれを回避する対応策としての行動といえた。さらには、近年乳牛の多飼養化、高泌乳化により、乳量水準に逆相関して乳脂肪が低下する傾向があり、その対応として脂肪酸製剤を恒常的に使用する動向が明らかとなった。これらの行動については、費用対効果からみると、生乳取引基準の乳脂肪分3.5%をクリアする場合は、脂肪酸製剤添加によって乳脂肪率を上げる経営的なメリットは現実的にはないといえた。他方で、乳脂肪分が取引基準の3.5%を下回ると手取り乳価が減額となる乳価体系においては、そのリスクを回避するいう経営的なメリットが認められた。 こうした脂肪酸製剤の利用については、乳業メーカーのヒアリングによれば現時点では生乳の風味に影響するほどの水準ではないという見解であった。むしろ現時点で牛乳の風味を左右する要因として殺菌工程の機械施設の違いがあげられていた。温度の上げ方の違いによって同じ生乳でも味に違いが生じることがわかった。しかしながら、北米ではバターの融点が高くなっていることなど乳製品の品質の変化を指摘する情報が確認され、その原因に脂肪酸製剤の利用が考えられていることがわかった。こうした事実からは、脂肪酸を給与することで乳製品の品質への影響が生じる可能性を排除することはできないといえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家庭の事情により研究活動を制限せざるを得なかったものの、実施できた調査や情報収集によって脂肪酸製剤利用に関わる酪農の実態を把握することができた。とくに酪農経営における脂肪酸製剤の添加に関する行動については、これまで明らかにされていなかったことから、新たな知見を提供できたといえた。
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Strategy for Future Research Activity |
酪農における飼料の違いが牛乳・乳製品の風味・食味に及ぼす影響について、情報収集を進める。とりわけ、エコフィード利用と草地放牧とを対照的に位置づけて、脂肪酸製剤利用と乳質に関する調査を実施する予定である。 また、穀物等濃厚飼料を最低限に減らす山岳酪農について、欧州のアルプを含めて調査を実施することを検討している。そして、草地放牧が付加価値として成立する条件について考察を進める。 エコフィード利用については、酪農で用いられるものを把握し、乳質への影響について情報収集および調査を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
家庭の事情により、国内と国外の調査が未実施となったものがあったため、次年度にもち越した。 次年度使用によって、未実施となっている調査を実施する計画である。
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